ミラー! (603)結婚後初出勤
怪我の為にゆっくり過ごした週末。休むほどじゃない怪我だし、結婚後職場初出勤だしね。行かなくちゃね。
「病院まで送らなくてもいいの?」
と妻である美里が声をかけた。
「職場へ顔を出してから病院へ行くよ。駐屯地から病院までバスが出ているし…。」
と、痛い腰をかばいながら着替えを済ます。駐屯地の西門前まで送ってくれるという妻。自転車は、病院関係者の人が持ってきてくれたけれど、乗れる状態じゃない。歩くのもちょっと距離があるし…。ま、徐々にだけど痛みはひいたけれど痛いのは痛い。
美里が運転する車の後部座席に未来とともに座る。心配そうに僕を眺める未来。なんだかんだいって週末はずっとこの僕のそばにいて看病してくれたんだよね。
車で数分。西門前の薬局駐車場前に停める。
「じゃあ、行ってきます。終わったらまた連絡するから迎えに来てね。」
というと、未来が手に持っているお弁当が入ったカバンを手渡す。
「パパ、無理しないでね。」
と微笑む未来の頭をなで、車を降りる。通勤途中の自衛官たちの視線…。未来が窓を開け、行ってらっしゃいと手を振る。痛いけど我慢して振り返す。案の定、衛生隊の隊員にからかわれる。
「遠藤3佐。初出勤は車ですか?いい身分ですねえ。」
「ちょっと金曜日に腰やっちゃってね…。」
やはり腰と聞くと、そのあたりをじっと見てにやけるんだよね。そして頑張りすぎですと…。違うって。幹部室についても同じ。からかわれる。新婚ってこんなものだろうか。それも妻は人気女優だしね。早く治さないといつまでも…。はあ…。
病院での診察でもまたからかわれる。廊下でばったり会った雅美にまでね…。仕事中の怪我だってば…。
「あ、遠藤。早く治したいのなら、鍼とかどう?行ってみたら?この近所にいいところ知っているから。」
と雅美が整骨院を紹介してくれた。よく病院帰りによってマッサージしてもらうらしい。産婦人科も体力勝負だし、肩こりが!って嘆いてるもんね。鍼かあ…。試してみるのもいいかもしれないね。