ミラー! (600)色々と… | 超自己満足的自己表現

ミラー! (600)色々と…

 眠い目をこすりながら、以前勤めていた駐屯地の衛生隊へ。ほんと何事かと思うくらいの呼び出し。できの悪い先輩医官がへまをしたらしい。きちんと引き継いだはずなのに、何してんだか。わざわざ隊長まで早く出勤して仕事をこなしていく。結婚後初仕事がこれだなんて…。もちろん出てくる新婚話。


「月曜日のテレビは大騒ぎだったね。あの立花真里菜の結婚式だしね。」
「そうそう!嫁にしたい女優ナンバーワン。10年以上も彼女に想われていた遠藤君は、幸せ者だね。」


と、元同僚たちが仕事をこなしながら声をかけてくる。機嫌が悪いのは例の先輩医官。僕よりも10歳年上だけど独身彼女なし。いつもこの僕を敵対視するんだよね。いつも僕の周りには女性が寄ってくると思われているみたいだ。そんなことはないと思うんだけどね。


「どの雑誌や新聞にも奥さんむちゃくちゃ綺麗に写ってたじゃないですか?その横に写ってた遠藤先輩。やはりかっこよかったですよ。」


と、後輩医官が言うんだけどね。


「そりゃ、あの奥さんの横で制服着たら誰だってかっこよく見えるよな。」


って嫌みを言う始末で。もういいよ。僕は普段制服脱ぐとあまりセンス良くないし…。


「単身赴任だろ?心配じゃないの?奥さん大モテだから。東京で浮気されるかもな。」


ほんと嫌みばっかり。まだ僕は結婚したばかりで…。呆れた隊長は話を変えた。でも僕の話なんだよね。


「で、指揮幕僚課程の事は言っておいたのか?」
「はい…でも受験は来年にしてほしいといわれました。今の中隊の事がありまして。」


そうなんだよね。異動したばかりだし、例の車両についてこなせるものが少なく、今養成中に近い。異動先の隊長は、快く対応してくれたけど、その上がいい顔をしなかったらしい。だって、この僕は政治家の跡取り養子息子。いつまでこの仕事を続けるかわからないだろうって。まあ、それはそうだけど…。指揮幕僚課程へ行って勉強して、将官にならないまま退官して、政治家になって…となると養成費用の問題と、他の幹部隊員の問題が絡んでくるんだろうね。


「でも遠藤君はずっとトップを貫いてきたから、行ったとしてもトップクラスを狙えるだろうね。そして末は将官。君の曾お爺さんのように幕僚長も夢じゃないかもしれないね。医官からの幕僚長。前代未聞だけど…。」
「でも僕は、政治家の道へ行くように言われてますから…。でも…。」
「でも?」
「医者として…小児科医として一生暮らしたいと思ったりもします。ここにいても駄目じゃないんじゃないかとか、諦めたほうがいいんじゃないかとか…。色々考えます。」
「そうか…いつまでも部隊勤務じゃね…君の腕が埋もれてしまう。それなら指揮幕僚へ行っても同じだよ。本当に小児科医として一生を捧げるのであれば、退官して勉強しなおすか、それとも…海外へ留学するってこともできる。ごく稀だろうけどね…。とりあえず、病院勤務を希望しておきなさい。ま、将来の事は、君が決めることだから。まだ若いからじっくり考えなさい。」


と、隊長は話してくれた。僕もそう思ってた。



いろんな道がありすぎてわからない。僕は政治家になりたいの?医者になりたいの?将官になって偉くなりたい?自分の為、家族の為にはどれを選んだらいいのだろうか…。でも僕は今の仕事を一所懸命がんばりたい。そうしているときっと道は開けると思うから。