ミラー! (591)記者会見
1次会と2次会の間にこの僕が嫌なものがある。なんで一般人のこの僕が出ないといけないんだろう。それはマスコミ向けの結婚会見なのだ。それもこのままの格好なんだよね。もろ僕の職業から職場までわかってしまう。だって僕の制服には、部隊章に職種章まで付いている。もちろん名札までだよ。規定通りにつけたらそうなってしまったからね。
会見会場への移動中、美里と少し話す。会見会場は、昨日今日と泊まるホテルの宴会場の一つ。美里だけでいいのにと思いながら、話していたわけなんだよね。はあ…金屏風の前で一緒に立って会見って…。いくらこの僕が元タレントだからってさ…。
「ねえ、美里。写真だけじゃダメ?一応僕は一般人なんだけど・・。」
「初めはそうしたかったのよ。でもね、春希さんは元タレントだし、そのことがばれて、一緒にっていう要望が多かったの。それでなくても自衛隊での広告塔的な存在だってマスコミ関係者は認識しているみたいだし…。よくわからないけどね…。」
「でもさ、この制服には、この僕の身元が完全にわかるものがたくさんついているんだから…。」
「あ、それ?そういうのは、自衛隊からの要望で、できる限りぼやかすとか処理入れるように指導が入っているのよ。名札と部隊章に職種章…。でも何度も自衛隊関係の雑誌に載っているから、わかる人はわかると思うけど?」
と、のんきに話す美里。有名女優の旦那になるわけだから、ファンやマスコミ側の立場からいえば、見たいという心境かもしれないけど…。休み明けが大変そうだねえ…。通勤路にマスコミとかいないよね?通勤の時は時間をずらしていくことにしようかな…。
会場のホテルへ到着。ほんと車から降ろされた玄関ロビーから厳戒態勢で…。やはりファンが待っているんだよね。僕はキチンと美里をエスコートして車から降ろし、介添人や会場スタッフの誘導で、会見会場へ向かった。会場前には、父さんが待ち構えている。ま、美里のスポンサーだし…そして僕の実父。気になるんだろうね。
仕事で忙しい養父は、挙式披露宴が終わりしだい、着替えて新神戸から新幹線で東京へ戻って行ったけど。
「春希、ほら、またネクタイ歪んでいるぞ。そういうところからきちんとしないと…。」
「ははは…また父さん…。どうしてここにいるわけ?」
そういうと、父さんはジャケットのポケットから、写真を取り出した。
「やはり、優希にお前の姿を最後まで見せたくてね。3兄弟の中で、一番のお気に入りだったからね…。一番手のかかるお前が…一番かわいかったみたいだし…。最後の最後まで、お前を遠藤へ養子にやることを悩んでいた。」
ほんといつもの胸のポケットに母さんの写真を入れて持ち歩いている父さん。一番愛していたんだもんね…母さんの事…。