ミラー! (577)大変な出来事 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (577)大変な出来事

 さあ始まった、展示会。朝から緊張しながら、ブースに立つ。今日は招待客への展示。それだけじゃなく、マスコミもやってくる。招待客は、有名政財界人や防災関係の会社などなど。もちろん消防やら警察といった関係者もやってくる。医療関係者もかな?


昨日メールで、春斗が来るらしい。大伯父さんである弐條雅司代議士の付き添いとしてね。今、春斗は地元秘書的な仕事をしはじめたみたい。それも今週に入ってからね。地元秘書について、ノウハウを学んでいる。例のイベントが終わり、本格的に政治の勉強を始めたんだよね?


大伯父さんは今、防災担当大臣をしている。昔から防災関係の委員に所属しているからね。


 たくさんの招待客が興味津々に機材を眺め、いろいろ質問をしてくる。機材の横には僕が派遣された時の機材を使った様子をパネル化している。間違えなく説明できたと確信している。そして政治家御一行様というような団体がやってくる。やはり大伯父さんの御一行で、この日のために東京の国会を抜け出して、展示会へやってきている。この展示会が始まる前に、テープカットをしたらしいよ。いくら親戚とは言え、ほんと緊張するよね。


大伯父さんは、ばあちゃんと21歳離れた弟。総理大臣有力者にいつも上がる人だけど、とてもおとなしく、なんていうのか、縁の下の力持ちタイプで、あまり表に出たがらない。形だけの弐條派会長。といっても実績がないわけじゃない。しっかりした立派な政治家だよ。


ばあちゃん的には早く直系の春斗を出馬させたいみたいだけどね…。でも今は世襲の世の中じゃない。それはわかっているけど、今までたくさんの政治家を輩出し、前代未聞の4人の党首を出した家系。それもばあちゃんは女性初の総理大臣になった人だからね。何としても春斗を政治家にさせたいんだろう。ま、昔から春斗の夢は総理大臣だからね。いいんじゃないかな?


 ついにやってきた大伯父さんである防災担当大臣弐條雅司代議士。防衛省関係者や、この僕の説明を聞きながら頷いているんだけど、なんだか表情がおかしい。目の焦点が安定していない。僕は春斗を呼ぶ。


「春斗、大伯父さんなんか体調おかしくない?」
「んん…。最近ちょっと良くないみたいなんや。食欲もないみたいやし、血圧も高いらしい。さっきからよく躓いておられるしなあ…。これ終わったらこっちの自宅でゆっくりしてもらう予定にはしてるんやけど…。」


説明が終わり、このブースを立ち去ろうとした時、大伯父さんが倒れた。


「大臣!誰か!」


もちろん側には医師免許持ちの春斗と、医官のこの僕。そして周りは衛生隊の看護師免許持ちがいっぱい。即、僕は部下に指示して、大伯父さんの診察を行う。診察しながら、東京から付いている秘書にいろいろ聞く。春斗は僕の部下にいろいろ機材を借りて、血圧を測ったり、バイタルを測ったりする。一卵性双子の連係プレーで、診察。騒ぎを聞きつけた、人たちが続々と集まってきている。


「春斗、点滴!」


一応、ここに置いてある機材で、診断と処置はできるけれど、あとは大きな病院に任せたほうがいい。僕と春斗で、応急処置を施し、やってきた救急隊員へ引き継ぐ。


「じゃ、俺、大臣に付き添う。これでも元内科医や。あとはまかせとき。」


といって、救急隊員とともに会場を後にした。何とか命に別条はないけど、あまり良くない。たぶん脳梗塞かもしれない。僕の専門じゃないし、レントゲンとかとってないから断言はできないけれどね…。機材があって、春斗がいてくれたから助かった。こういうのは早い対処がものを言うからね。


 弐條大臣が倒れたニュースはその日のうちに伝えられた。早い対処で、障害が出るとかそういうのはないけれど、入院が必要。大伯父さんもいい年だし、ゆっくりしたほうがいいんじゃないかな。