ミラー! (546)ナチュラルな君 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (546)ナチュラルな君

 冬季休暇までもうちょっと。休む限りはたくさんの仕事をこなさなければならない。医務室で書き物三昧。隊員の診察もしたり、病院への紹介状を書いたり、仕事中の部下達を覗きに行ったり。


「医官はいいですね。演習行かないんでしょ?」


と部下。ま、そういえばそうだね。基本僕は病院半分医務室勤務半分だから。災害時は出て行くけどね。ま、看護師の免許を持つ隊員にまかせっきりというのが正しい。富士のとてつもない寒い時期に、今年演習へ行くという。後方支援だし・・・しょうがないじゃん。あ、あの医官は行くらしいね。たまには行って来いなんていわれてね。例の意地悪先輩医官。


そういや何しにここへ来たんだっけ・・・。と、右手にもっている袋を眺める。そうそう、差し入れに来たんだった。ちょっと用事で休日出勤。仕事をしている衛生隊員たちに温かい缶コーヒーを届けに来たんだったよね。僕は差し入れを手渡し、じっと仕事を眺めていた。


「休んだら?キリがよさそうだし・・・。」


と、休憩を促す。そうですねえと、隊員たちが休憩。相変わらず、若い女性隊員たちは固まって雑誌を見て騒いでいる。


「見てみて!やっぱりこっちのほうが綺麗だよね。脱私宣言!」
「うん!ナチュラルでいくんでしょ?ホント彼女ってナチュラルでも十分だよね。羨ましいくらい・・・。ですよね!遠藤一尉。」


と僕に突っ込む。何でこの僕に?と思って雑誌を覗き込むと、なんと立花真里菜。一気に顔が赤くなる僕を見て、女性隊員たちは僕をからかう。もちろんこの女性隊員たちは、立花真里菜がこの僕の婚約者である事を知っているからね。


「愛し愛されたい自分・・・いいですね、1尉。こんなに綺麗じゃね。愛し愛されるんでしょうね・・・いいなあああああ。」
「ほんと!美男美女同士ですから・・・。絵になりますよね?1尉。で、いつご結婚ですか?」
「さっきから1尉は口数少なすぎです!いろいろ聞きたいです!出会いとかそういうの。やっぱり例の雑誌ですか???」


うううう・・・。さすがこういうのに興味津々な女の子たち。恥ずかしくていえない。こういうのは苦手・・・。


「あのねえ・・・僕は立花真里菜と結婚しないよ。あくまでも彼女。素の彼女。素はもっと綺麗で・・・そ、その・・・ステキだよ。あ、もう時間時間。」
「え~~~!1尉もっとお話聞かせてください。今後の参考に!」
「何を参考にするんだ?僕はまだ仕事が残っているから、行くよ。」


といって僕は逃げるようにその場を後にした。



もちろん最近、ナチュラル宣言をした彼女はさらに綺麗になって生き生きしている。今までの彼女は事務所が作り上げたスタイル。型にはめられている彼女だったから、脱自分宣言をしたとたん、今までの型から解放されて、さらに女に磨きがかかっていると思う。



あと恋もしているしね。恋は女性を綺麗にするんだ。春には結婚します宣言もしたし・・・。そして夏までには引退。ま、相手がこの僕だって言うことは公になっていないけれどね。



早く冬期休暇に入って彼女や子供達とゆっくり過ごしたい。