ミラー! (534)体験 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (534)体験

 1週間近く休みをもらって帰省中。金曜日はいつもの病院の日だから、帰らないといけないけれど、その日までは自宅で家族団らん。彼女まで未来を連れてきてくれて、ホント楽しい休日って感じ。美紅を幼稚園に送るとき、どうしてもうらやましそうに見つめる未来。


「僕も幼稚園へ行きたいな・・・。ねえ、ママ。僕も幼稚園へ行きたい。」


苦笑する僕と彼女。すると美紅がこういう。


「未来君、一緒に行こうよ。ねえ、いいでしょ?パパ。」
「え?一緒にいくことはできても、幼稚園の中には入れないよ。」
「どうして?未来君はそうして美紅と同じ幼稚園へいけないの?」
「だってね、未来の幼稚園へ入ってもいいですよって言われてないんだよ。」


悲しそうな瞳で見つめる美紅。最近未来と美紅は、一緒にいる時、よく遊んでいる。仲もいい。本当に一緒に通園させたい。そうだ、美紅の送り迎えの時だけでも、未来を連れて行こう。そうしたら先生の目に留まって少しは可能性が出てくるかもしれない。


そう思い、残りの3日間だけど、美紅の通園に未来を同行させる事にした。もちろん未来は付いてくるだけだよと言い聞かせて。


 楽しそうに未来と美紅は手をつないで地下鉄の駅へ向かう。まるで双子のような二人。幼稚園へ着くまで、笑ったりしている二人を見て、本当にどうにかしたいと思った。未来と一緒にいるようになって、美紅は以前の美紅に戻りつつある。幼稚園の教室の前で、未来と美紅は手を振って別れる。本当に名残惜しそうな表情。ついには美紅が別れを悲しんで泣き出した。それに慌てる先生たち。


「どうしたの?美紅ちゃん?」
「山本先生。美紅ね、未来君と遊びたいの。パパがね、未来君はこの幼稚園に入れてもらえないからここでバイバイだって。未来君と一緒に幼稚園へ行けないのなら、美紅も幼稚園へ行かない!」


と、足をばたつかせて、泣き叫んだ。すると未来が美紅の手を引っ張って起こす。


「じゃあね、美紅ちゃん。僕とかえろ。家で一緒に遊ぼうよ。ね?いいでしょ?春希先生。」


んん・・・。どうすればいいか悩んでいる時に、僕の恩師である園長先生がこの騒ぎでやってきた。そして美紅から事情を聞く。


「ま、あなたが未来君?お名前いえるかな?」
「うん!僕は立原未来といいます。3月3日生まれの4歳です。ママの名前は立原美里。パパはいません。春になったら春希先生が僕のパパになるんだって。」


未来の言葉に感心する先生。すると園長先生が微笑みながら言った。


「じゃ、あと3日間、未来君、ここのお友達になる?」
「うん!」


そういうと、園長先生は担任の先生に言って未来を教室へ入れる。


「春希君、とてもいい子ですね。本当あなたの小さいころにそっくりで・・・。3日間あの子の行動を見て、理事長に相談してみましょう。もちろん入園できる確率は低いでしょうけれど・・・。未来君が使うものに関してはこちらでお貸ししますから、ご心配なく、春希君が送り迎えする3日間、未来君をこちらで預かりますね。」


僕は未来の病気のことを十分理解してもらって、お弁当だけ、あとで届けるように伝えて、幼稚園をあとにした。