ミラー! (533)母校へ・・・
8月も終わり、愛しい彼女は未来と共に、東京へ戻って行った。僕は相変わらず仕事三昧。病院と駐屯地を行ったり来たりの生活。また誰もいない家。必然的に何もない限り、昼と夜は駐屯地の食堂でお世話になる。一人暮らしってちょっと寂しいね。でも嬉しい事に、彼女が週に1回宅急便で冷凍したおかずを送ってきてくれる。それをひとつひとつ解凍して大切に食べている。冷凍だからちょっと味は落ちるけれど、彼女の料理はおいしい。料理が上手かった優奈よりも上手かもしれない。彼女は基本、だしはちゃんといちから取って、少々高くても有機野菜とか、国産のものを吟味してくる。今まで未来の病気のためにがんばってきたから出来ることなんだよね。
9月のある日、小学校の参観日を兼ねて、休みをとり、東京へ戻る。今まで仕事が忙しいと言い訳していった事がなかった参観日。優希は朝から張り切って、家を出て行った。参観日へ行く前に、同じ敷地にある幼稚園へ、未来の編入について相談しないといけない。
つい最近、未来の戸籍へ僕の名前が載ったからね。だからその戸籍の書かれた書類を持って、幼稚園へ相談に行く。もちろんアポイントメントは取ってある。
ある部屋に園長先生や学院関係者と共に入り、事情を説明する。できれば、新学年から未来をこの幼稚園へ入れたいと思っているということを伝える。基本的にこの幼稚園は、途中入園を受け付けていない。それを承知の上で、お願いに来た。この幼稚園の園長先生は、僕の恩師でもある。僕がまだ遠藤姓ではなく、弐條姓の頃から知っている先生。
「春希君。気持ちは十分わかります。でもね、一人許すと、他の家庭もってことになるでしょ?一番いいのは1年間、他の幼稚園で見てもらって、小学部をお受験するって言うのがいいと思うわよ。もちろん優希ちゃんも美紅ちゃんもこの学院、そしてあなたも小学部を卒業しているから、子弟枠と言うものがあるし・・・。」
「しかし、未来は一度も集団生活をしていないのです。誰も知らないところに放り込むよりも、仲のいい美紅と同じ幼稚園のほうが・・・。この場だけではなく、学院のほうで検討していただけないでしょうか・・・。一度、未来にも会ってもらえないでしょうか・・・。とても優しくていい子ですから。」
とりあえず、検討しなおし、また連絡するという事で、話をつけた。僕は頭を深々と下げて、幼稚園を後にし、参観日の行われる、小学部へ向かった。