ミラー! (435)特別儀仗隊
僕の義理の弟の富田君。春から入校していた術科学校をでて、彼が任官されたところは、特別儀仗隊で有名な部隊。ということで東京市ヶ谷勤務、そして小隊長として任じられた。もちろん警務科へ行った限りはその部隊を希望。警務科経験が少ないけれど、入校中の優秀な成績が認められ、任官が決まったらしい。
警務科いちの花形部隊。容姿端麗で優秀な人材が集まる部隊の小隊長だから、結構緊張感でいっぱい。大丈夫。大丈夫。まあ入ってすぐに小隊長ではなく、研修期間があるらしいけれど、科が違うからよくわからない。まあ一所懸命やっている。
富田君の住まいは、僕の実家であり陽菜の実家。まあ言う僕の自宅の隣。遠藤の表札の下に富田の表札が付けられ、公邸住まいの両親に代わって、家を守っているようなもの。
陽菜は暢気なものだ。実家にお手伝いさんがいるので、のんびり仕事もしている。なんだかんだいってお嬢様気分は抜けていない。仕事をしているという理由でお手伝いさんにまかせっきり。ちょっと富田君は機嫌が悪い。あ、言っておくけど、お手伝いさんは富田君が雇っているわけではない。実家の遠藤家が雇っているわけ。
僕が市ヶ谷へ通う日、富田君と出勤時間が重なれば、一緒に通勤する。大概一緒なんだけどね。自宅から麻布十番まで歩き、そこから地下鉄で市ヶ谷まで。お互い私服通勤だから楽でいい。
ホント富田君は保安中隊に任官してからさらに男に磨きがかかる。さすが一流の男前がそろうという噂の中隊所属。そして身なりに厳しいからね、そういうところは富田君向きかも。それでなくてもすごい倍率をくぐり抜けてきたしねえ・・・誇りを持って仕事をしている。
この前も駐屯地内の広場で、儀仗の訓練をしているのを見た。警務科に配属されてまだ1年しか経っていないのに、やはり素質というのか、完璧に身についているのがわかる。元々姿勢が正しかったけれど、さらに姿勢が綺麗で、通勤中もきちっと立っている姿はさすがだと思った。
「で、どう?陽菜は。」
富田君は苦笑。もちろん陽菜をとても愛している富田君。あまり愚痴は言わないけれど、顔に出ている。
「まあですねえ・・・。お父さんに頼んで家政婦さんに辞めてもらおうかと思っているんです。最近家政婦さんにまかせっきりでして・・・。もちろん家政婦さんがいてくれるおかげで、俺が疲れて帰ってきても、夕飯も風呂も準備されていて助かりますが・・・。でも一緒に協力してやろうと決めたのに・・・。」
「そうだね。元々陽菜はマイペースで、お嬢様で育っているからね・・・。やれば出来るけど甘えが出てしまうんだよね・・・。で、家族計画のほうは?」
「もちろん・・・それは・・・陽菜との約束ですから・・・。来年くらいにいたらいいなあとは思います。もちろんできる限り産休・育休はとってもらいますから。」
まあ二人のことだから僕がとやかく言う必要はないんだけどね・・・。でも最近陽菜の怠け癖やわがままが気になってしょうがないんだよね。富田君の機嫌の悪さもね・・・。