縁 (56)あれ?
私はいつものように朝、孝志君に会うため、いつもの時間に家を出る。孝志君とおそろいの手袋をつけ、広尾駅周辺で友人と合流。
「昨日のバレンタインはどうだったの?あったんでしょ?優希いい顔しているもん。」
「うん、まあね。久しぶりにゆっくりしちゃったの。孝志君のお母様とも食事したし、ホントに楽しかったの。お母様ったらね、私に娘が出来たみたいねって言ってくださって・・・・。」
私は孝志君からクリスマスにもらった指輪を眺めてにんまり。そしてその指輪を撫でる。
「優希はいいわねえ、未来の旦那様をゲットできたんだもんね。お爺様もお許しになったんでしょ。良かったね、未来の代議士夫人だもんね・・・。」
「ヤダあ。照れるじゃん。」
なんて友人たちとじゃれあいながら、いつものように登校。うちのお嬢様学校のようなところは稀に私みたいに婚約者がいる子が居たりするのよね。徐々に近づくいつもの場所。そしていつもの時間。
「あれ?優希おかしいね。いつもならここですれ違うはずなのに・・・・。」
「そうよね。きっと超進学校だから急に朝の補講でもあったんじゃない?」
「そうだといいけど・・・。」
ま、私はそのとききっと友達の言うとおり補講なんだと思って気にしなかった。
毎日毎日いつもの場所時間になっても孝志君と出会うことはなかった。おかしいと思って電話を入れてもメールをしてもつながらなかったのよね。気になってしょうがなかったから、朝早く、孝志君のマンションへ行って見た。玄関ロビーのオートロック呼び出しを鳴らしても反応がない。するとグッドタイミングで管理人さんらしい人が掃除のために出てきた。
「あの・・・。遠藤さんってお留守ですか?」
「遠藤さん?2月末に引っ越されましたよ。」
「どこへですか?」
「さあ・・・地元が何とかと・・・。何か?」
「いえ・・・。すみません・・・。」
え?孝志君、私に言わずに引っ越したの?私はいてもたってもいられずに、放課後早めに学校を出て、孝志君の学校へ行ってみる。校門に立ち、麻高5のメンバーを探す。すると出てくる孝志君の友人たち。私は勇気を出して声をかける。
「あ、あの!」
「何?」
「私、弐條優希って言います。あの・・・遠藤孝志君は・・・・?」
「あ、君って遠藤の彼女?遠藤さ、家庭の事情で終業式まで休んでるよ。終業式も来るかどうかわからないって聞いたけど?」
「家庭の事情?」
詳しく聞こうと思ったんだけど、それ以外は知らないって・・・。どうして?何も言わずにどこかへいってしまうなんて・・・。お友達たちはメールで聞いておいてくれるっていったから任せるしかないか・・・・。