縁 (54)お別れのバレンタインデー | 超自己満足的自己表現

縁 (54)お別れのバレンタインデー

 バレンタインデーに優希と会う約束をした。


「ねえ、孝志君。バレンタインデーは何がいいかなあ?」
「そうだな・・・優希が得意なものすべて食べたいなあ・・・。優希ってお菓子作りが得意だったよね。」
「え?孝志君、苦手じゃないの?甘いものが・・・。」
「いいんだ。優希の得意なお菓子が食べたくて・・・。せっかくのバレンタインデーだろ?」


優希は満々の笑みで頷く。ホントうれしそうな顔・・・。この顔がきっと悲しい顔になる。


 ついに来たバレンタインデー。優希は僕の自宅へやってきて、部屋でゆっくり過ごす。母さんは今日で優希と別れるということを知っているから協力的だ。この前と違って微笑みながら、お茶を出す。


「優希ちゃん、ゆっくりして行ってね。今晩夕食もどうかしら?」
「はい。本当にお邪魔しちゃっていいんですか。」
「ええ。孝志の大切なお友達ですものね。」


そういうと母さんは部屋を出て行った。優希は紙袋から、ケーキの箱を取り出し、そしてうれしそうにふたを開ける。


「これはね、ママに教えてもらったの。甘さ控えめのケーキ。ママもね、パパにこれを贈ったんだって。これならパパも食べてくれたって言うから・・・。」


本当に買ったんじゃないかと思うような立派な一人分の大きさのケーキ。僕はキッチンに行ってお皿とフォークを取りに行く。そして母さんに言われる。


「孝志、今日は何も言わないけれど、今日限りにするのよ。」
「わかってる。明日からあっちへ準備に行くんだから・・・。母さん安心して。今日で最後にするから・・・。だから・・・心配しなくていいよ。もうこれっきりにするから・・・。」


そういうと僕は部屋へ戻る。部屋へ入ると優希は満面の笑みで迎えてくれる。この笑顔が大好きなんだよね。でもこの笑顔を忘れないと・・・。僕は優希の横に座ってお皿を並べる。すると優希は慣れた手つきでお皿に盛る。


「私が孝志君に食べさせてあげるね。」


といってフォークで一口分を僕の口に運ぶ。


「あ~~~ん。」


もちろん優希が作ったケーキを一口。甘いものが苦手な僕は優希が喜ぶと思っておいしいとか言いながら、一つのケーキを優希と分けて食べる。優希の本当にうれしそうな顔といったら・・・。やはり我慢できない。もう別れないといけないなんて・・・。そんなの嫌だよ。どうして僕たちは兄妹なんだ?このときほど神様を恨んだよ。愛しちゃいけないのなら、どうして出会わせたんだ!いたずらなんてしないで欲しい・・・。


 優希はケーキのほかに、プレゼントもくれた。


「今年受験でしょ?孝志君にお守り作ったの。これはね、ストーンブレスなの。おまじないがたくさん入った石ばかりで出来たブレスレット。数珠みたいに使ってね。私も同じものを作ったのよ。ほら見て。」


優希の腕にはまったくデザインの同じブレスレット。このブレスレットが切れると願いがかなうらしい。優希はきっと僕の受験と、そして二人の縁を願ったんだろう・・・。そして最後には結婚?決して叶うはずのない願い・・・。叶ってはいけない願い・・・。



縁46 ただ寄り添いながら世間話をして時間だけが過ぎていく。


「ねえ、孝志君。今日はキスしてくれないの?最近どうして?」
「え?ああ、そうだね・・・。優希と寄り添うだけで幸せだからかなあ・・・忘れてたよ・・・。して欲しいの?」


優希は頷く。キスくらいならいいよね?それ以上は良くないけど・・・。僕は優希にそっとキスをすると、優希は僕の胸にしがみつく。兄妹じゃなかったらこのまま押し倒してって事があるんだけど、それは許されない。本当にごめん、優希・・・。


 楽しく夕飯を食べ、僕は優希をマンションまで送った。そしていつものように玄関ロビー前で手を振って別れる。これで優希とさよならしないといけないんだよね・・・。僕は携帯を取り出し、お父さんに電話をかける。


「お父さん、今日で優希とのこと最後にします。優希にはさよならと言っていません。いったらきっと優希は・・・。」
『わかってるよ・・・。あとはこの私が責任を持つ。優希を説得する。だから孝志、お前は将来のためにがんばりなさい。明日、正午に迎えに行く。お母さんと自宅マンションの前で待ってなさい。一緒に成田まで行こう。』
「んん・・・。」


明日からひと月僕は母さんと留学準備のため、イギリスに渡る。お父さんが手配し、機長として操縦する飛行機に乗って・・・・。