縁 (52)決意 | 超自己満足的自己表現

縁 (52)決意

 すべてが終わり、お開きになると、優希は僕をマンションの玄関前まで送ってくれた。


「孝志君、楽しかったね。お爺ちゃんお婆ちゃん、そしてママは孝志君のこと認めてもらえそうだし。ねえ、次はいつゆっくり会える?」
「わからない・・・。これからまた仕事が忙しいんだ。春になると受験生だから仕事は減らすし・・・。また連絡するよ・・・。」
「んん!また孝志君のおうちへ遊びに行っていい?」
「いいよ。勉強くらいなら教えてあげるよ。」
「んん・・・。」



縁52 優希は頷くと、僕の胸にしがみつく。


「私のこと離さないでね。信じてるから・・・。」


といって優希は僕の頬にキス。そして手を振って名残惜しそうに別れる。あの可愛い笑顔を裏切らないといけないんだよね・・・。


 自宅に帰るまで、色々と考える。実のお父さんの「出来るだけ早く別れなさい」という言葉と、優希の「信じてるから・・・。」の言葉が交互に脳裏に浮かび、心が締め付けられる。悩んでいる場合じゃない。戸籍上は大丈夫でも、倫理的にだめだろ?絶対に別れないといけないんだから・・・。色々考えているうちに自宅に到着。


「お帰りなさい、孝志・・・。」


と、母さんが出迎えてくれる。母さんの表情は、やはり優希の家に行くことを知っているから複雑だ。


「で、どうだったの?孝志・・・。」
「・・・・。」
「弐條家の人たちって、いい人ばかりだったでしょ?」
「んん・・・。お爺さんが、僕が遠藤春樹の孫だと知って、すごく喜んでくれたんだけどね・・・。そして僕が政治家になるんだというと、余計にね・・・。ねえ、母さん。春までにここから引っ越そうよ・・・。」
「え?」
「だってここさ、あの男の嫌な思い出ばっかじゃん。石川とは言わないけど、どこかへ引っ越そうよ。3人じゃ、この家はでかすぎるし・・・。別に学校から遠くても構わないからね・・・。」
「そうね・・・おじいちゃんに聞いてみるね・・・。」


なぜ引っ越すって?それはそっと優希の前から姿を消すための一つ。そして携帯電話も解約しようとも考えている。そして仕事も学業優先にしたいと伝えて辞めようと思う。今すぐって言うのは無理だけど、優希との思い出をたくさん作ってから姿を消そうと思ったんだ。