縁 (49)父
複雑な気持ちで飛行機に乗って自宅へ戻ってきた。いつものように母さんは僕に声をかける。
「あら、孝志、どこへ行っていたの?朝何も言わずに早く出て行っちゃったから心配したじゃない。」
「大阪に行ってた。」
「大阪?」
「まあ正確に言うと兵庫県の伊丹だけどね・・・。」
「伊丹?」
母さんは不思議そうな顔をして僕を眺めていた。この場で母さんを問い詰めてもいいんだけど、今のところ僕にはその余裕はない。僕は部屋に籠もってまたパソコンを立ち上げる。そしてキーワード検索してみる。
『弐條孝博 A社 機長』
すると出るわ出るわ・・・。プロフィールから何から何まで・・・。
『弐條孝博 12月25日生まれ A型 航空会社A社個人筆頭株主であり、欧州航路担当機長。・・・・・・(旧姓:源)弐條雅和元総理の婿養子。家族:弐條元総理の長女が妻。子供は一男二女。弐條○○代当主。・・・・・』
もちろん顔写真まで・・・。もちろんこれは、優希の部屋にあった優希のパパの写真と同一人物・・・・例のBMWの男・・・。そっか今日誕生日なんだ・・・。僕と一日違いだよね・・・。そういや優希は年末までパパはいないって言ってたよね・・・。写真を見れば見るほど、僕に似ている。やはり僕はこの人が僕の父さんじゃないのかなあと思った。
そういや母さんは言ってたよね。本当にお父さんは僕を認知したかったって・・・。でも母さんが断ったって・・・。ということはお父さんは僕の存在を知っているはずなんだよね。
僕は会いたくて会いたくてたまらなくなった。突然家に押しかけたら迷惑かなあ・・・。奥さんは僕の存在を知っている?きっと知らないだろうね。だって、お父さんの実家の人たちが知らないんだから・・・。ああ、会いたい。僕があなたの息子ですって告げなくてもいいから、会って話がしたい。どんな人なんだろう。優希がやさしくていいお父さんだって言ってたよね。
優希がもしかしたら僕と異母兄妹になるっていうことを忘れていたのは、言うまでもないけれど・・・。