縁 (36)出生の秘密 | 超自己満足的自己表現

縁 (36)出生の秘密

 あの暴力沙汰のあと、僕は母さんをリビングへ連れて行き、怪我の手当てをした。母さんは涙ぐみながらいつまでも謝っている。傷だらけの母さん・・・。とてもかわいそうだった。


あの男は家を出て行ったみたいだ。きっとどこかホテルにでも泊まるつもりなんだろうか・・・。この日の夜は帰ってこなかった。


 怪我の手当てをしたあと、僕は母さんと話をした。


「母さん、僕さ、知ってたよ。あの男の息子じゃないって・・・。」
「え?」
「事故のあと、輸血したじゃん。そのとき血液型を知って違うと思ったんだ。母さんはOであの男はBだろ?僕がA。おかしいじゃん。そうだろ?母さん。」
「んん・・・。」
「あの男が言う、わけのわからない男じゃないんだろ?僕の本当の父さんって・・・。」
「ええ・・・ちゃんとした人よ。ただ・・・。」


母さんは重い口を開いた。


縁36 「あのね、あなたのパパは今幸せに暮らしているから、詳しくは言えないのだけど、本当のパパはかっこよくてやさしいいい人だったの。ママの初恋の人でね、ずっと憧れてた。あなたのパパはあなたが生まれる前、色々あったんでしょうね・・・妻子がいたのに色々な人と浮気して、気を紛らわせていたみたいなの。その一人がママよ。気がつくとあなたがお腹にいて、どうしてもあなたを産みたかった。大好きな人の子供であるあなたを育てたかった。もちろんあなたのパパはママが妊娠していると知ったとき、認知してくれるっていったわ。でも色々事情があってママから断ったの。あの人には幸せな家庭があったんだもの。ちゃんとした家柄の人で、誠実で、まじめな人。あなたが生まれて別れるまで、親身になって気を掛けてくれた・・・。それだけでママは幸せだったの・・・。本当はあなたを一人で育てたかったのよ。でもあなたにはパパが必要だと思ったから、あの男と結婚した。そして今まで我慢してきたの。孝志、わかってくれる?本当にごめんなさい。ママの身勝手なわがままで、孝志を苦しめてきたんだものね。恨むならママを恨みなさい。決して本当のパパを恨まないで・・・。悪いのは全部ママなんだから・・・。」


僕の出生の秘密・・・。

ずっと17年間秘密にしてきた僕の秘密・・・。

別に僕は母さんを恨んだりなんかしない。

だって母さんはずっと僕を大切にしてくれてたし・・・。別にこんな話聞いたからって、グレたりなんかしない。ますます母さんを守りたくなった。ずっと僕のことばかり考えてきてくれた母さんなんだから・・・。感謝しないといけないよね・・・。おかしいかな・・・・。