縁 (28)CM打ち合わせ | 超自己満足的自己表現

縁 (28)CM打ち合わせ

 週末、広告主や制作会社との打ち合わせが入る。何の会社って?それは航空会社。日本2大航空会社の一つJ。実は美咲さんのお父さん、お母さんが勤めている会社の敵対会社なんだけど・・・。年末からのキャンペーンを始め、1年契約らしい。(ちなみに僕は未定・・・。添え物だからね。)なんと僕はパイロットの格好をするらしくって、サイズを測られる。美咲さんCAか・・・。ま、メインは美咲さん。高校2年でパイロットの制服を着るなんて思わなかった・・・。大体の3サイズを伝えてあったのか、試着用の制服が手渡された。あとは着てみて丈などを直すって感じかなあ・・・。すると制作会社の人が、マネージャーに聞くんだ。


「この男の子の芸名決まったんですか?それとも本名で?」


そういや決めないとねえなんて、この前社長が言ってたんだよね。できれば本名がいいんだけど・・。でもお爺ちゃんが「遠藤」と言う苗字は使わないで欲しいといっていたから、きっと芸名って言うものが決められているんだろう。


「孝志君の芸名は「榎本孝志」です。それでよろしくお願いします。」


榎本孝志か微妙な名前だなあ・・・。美咲さんは「いいじゃん」なんていって微笑んでいた。そしてCAの制服を持って更衣室へ・・・。もちろん僕も着替えてみる。スタイリストさんが仮止め用のピンを持って僕が着替えるのを待つ。この制服は袖の線が3本だから、副操縦士?こういう制服って初めてだから、ドキドキしながら制服の半そでシャツに袖を通し、黒のスラックス、ベルト、ネクタイ、ジャケットを着る。


「孝志君足長いね・・・。ズボンの裾を伸ばさないと・・・。ああ、手も長いね・・・ジャケットも・・・。いいスタイルだわあ・・・。8頭身じゃない、9頭身に近いね。なんて言うのかなあホントにスーパーモデル体型だ・・・。」


縁28 鏡の前で制帽も被ってみる。結構いい感じじゃん。最近また背が伸びて180センチを越えようとしている。最後に黒の革靴を履いて完成。


「完璧!あとサイズさえなおせばいい。本当に高2?見えないよね。大学生?それともパイロットなりたて?」


着替えが済むと、また打ち合わせの部屋へ。まだ美咲さんは出来ていないようだけど、航空会社の広報担当や制作会社の人たちが僕を見て驚く。


「ほほお・・・。ホントに君、高校生?本物のパイロットって感じだよ。でもここまで容姿のいいのはうちにはいないけどね・・・。まあいるとしたら競合会社にいるにはいる。モデル顔負けの機長がいるらしいよ。超有名な。なんだったかなあ・・・そうそう、弐條孝博。」


それってもしかして美咲さんのお父さん?そうだよな・・・結構かっこよかった。


 美咲さんが着替えを済ませ入ってくる。やはり綺麗だよ。こんなきれいなCA見たことないよ。美咲さんは僕の顔を見ていうんだ。


「あ!似てる!!!」
「だれに?」


すると美咲さんは僕の耳元で言う。


「私のパパによ。若い頃に似てる。」
「へえ・・・。」


一応イメージ的なことで写真を撮る。そのうちのポラロイドの1枚を記念にもらったんだ。これからの週末撮影やロケで忙しいけれど、やるっていった限りはやらないとね・・・。


 打ち合わせ終了後、僕は財布からあるものを取り出して航空会社J広報部の人に聞いてみる。そのあるものとは、例の古い名刺。


「あの、この人ってどんな人ですか?」
「ん?古い名刺だね・・・。確かにこれはうちの20年ほど前のロゴで、名刺形態だよ。うちの本物の名刺だ。源孝博?このとき副操縦士ってことは今は機長クラスだよね・・・。でも源って苗字、いまはいないよ。もう辞められたんじゃないかな・・・。源ねえ・・・。僕は入社してまだ10年だから、知らないよ・・・。取締クラスなら知っているかもしれないけどね・・・。」
「すみません、ありがとうございます。」


といって僕は例の名刺を受け取って再び財布に戻す。


 僕はマネージャーさんたちと別れ、自宅に戻る。


「お帰りなさい、孝志。早く宿題やってしまいなさい。で、今日は何の打ち合わせ?」
「CMらしいよ。航空会社Jの。僕さ、副操縦士の格好をするんだ。写真もらったから見る?」


僕は母さんに写真を見せる。その写真を見て母さんの様子がおかしい。


「母さんどうかしたの?そういや、母さん、ここの会社にいたんだよね。懐かしい?」
「そうね・・・。懐かしいわ・・・。この写真借りていい?」
「いいよ。じゃあ、僕さ勉強してくる。」


母さんは写真を持って自室(といっても寝室だけど・・・。)へ入った。ホントおかしいよね・・・。