縁 (27)やっぱりやってみたい!
9月中旬、最近始めた予備校から帰ってくると、お客さんが来ていた。そして父さんまで帰ってきている。誰だろうと思いつつ、鞄を部屋に置きに行き、その後リビングへ。すると来ていたのは僕をスカウトしたタレント事務所の社長。リビングのソファーに座って色々話をしている。
「お帰り、孝志。」
「母さんただいま。」
するとお爺ちゃんが僕を呼び、話に入る。
「久しぶりだね、孝志君。どうかな?怪我の具合は・・・。」
「はい何とか戻りました。」
「そうかよかった。事故を聞いた時、せっかくの逸材をなくしてしまうんじゃないかなと思って心配していたんだよ。」
「そうですか・・・今日は何か?」
「今日はね、改めてご両親とお爺様を説得に来たんだよ。どうしても企業側が君を使いたいといってきてね・・・。やってみようと思わない?もちろん美咲とペアなんだけど・・・。」
お爺ちゃんは顔をしかめていたんだけど、なぜか父さんは乗り気のようだ。
「孝志、モデルやりたいんならやってもいいぞ。父さんは構わないんだ。好きなことをすればいいよ。ずっと続けたいのならそれでいい。父さんは反対しない。」
「え?」
すると爺ちゃんが言う。
「孝志は将来政治家になって私の後を継ぐんだ。この受験前にそんなちゃらちゃらしたことなど・・・。」
「いいじゃないですか。これも経験ですよ、お義父さん。な、孝志、やってみなさい。」
異様にニコニコ顔の父さん・・・。きっと何か企んでいるんだろう。もちろん僕自身やってみたいんだ。美咲さんの側にいることが出来るし、楽しそうだもんな・・・。
「僕さ、やってみたいんだ。お爺ちゃん、きちんと勉強するし、いい大学もいく。だから許して、よお爺ちゃん。」
お爺ちゃんは条件付で許してくれたんだ。もちろんそれは成績のことで、成績が下がらないようにときつく言われる。そして学校もきちんと行くことなどいっぱいね・・・。早速社長さんは契約書を取り出して、契約する。
ギャラは出来高制。
主に美咲さんとペアで・・・。
仕事は休日か放課後。
父さんは契約書にサインを書き、印を押す。もちろん社長さんはニコニコ顔。週末には打ち合わせがあるからといって帰っていった。
どうしてやりたいって言ったか?
それは本当の父さんを探すため。色々なところから情報を集められると思った。そして仕事中いつも美咲さんといることが出来る。あとは周りに気にせず相談も出来るだろ?だからやってみようと思ったんだ。