縁 (24)帰宅 | 超自己満足的自己表現

縁 (24)帰宅

縁24  始業式の前日、自宅へ戻ってきた。もちろん何とか宿題を終え、明日提出できそうだ。携帯電話を買いに渋谷へ行く。事故の証明とそしてそれによる破損を告げ、同じ機種ではないけれど、新しい携帯を購入した。破損した携帯を持ってデータが残っているか見てもらったけれど、一部だけ残っていた。出来る限り転送してもらったんだけど、やはり優希ちゃんのデータは消えていた。もちろん一緒に撮った写真も・・・。うなだれながら広尾駅に降り立つ。そして気がつくと優希ちゃんの住むマンションの前に立っていた。そして溜息をつき、帰ろうと振り向く。


「あ・・・。」


そこには買い物袋を抱えた優希ちゃんが立っていたんだ。顔をしかめる優希ちゃん。


「優希ちゃん・・・。」


優希ちゃんはプイッとしてマンションに入っていく。


「ごめん!このひと月連絡できなくて!」
「孝志君なんて嫌いなんだから!!!」


そういうとオートロックを解除して中に入っていこうとする。まだ足が完全に治っていないから、追いかけることが出来なかった。とぼとぼと帰る帰り道。まだ優希ちゃんが好きなのに・・・どうしたら許してもらえるんだろうと思いつつ、コンビニによってお茶を買う。そしてふと財布の名刺に気がつく。これは前、芸能プロダクションにスカウトされた時にもらった名刺・・・。そしてその裏には美咲さんの携帯番号が書かれている。仕事のこととか、優希ちゃんの事で相談があったら電話してって言われて書いてくれたんだ。美咲さんに電話してみようと思って携帯に電話。留守電だったけれど、メッセージを入れてみる。


「遠藤孝志です。色々相談がありまして・・・。また掛けなおします。」


と・・・。そして帰宅。うなだれている僕におじいちゃんは心配そうに見つめている。


「お帰り、孝志。」
「ただいま・・・。疲れたから横になる。夕飯は要らないって母さんに言っておいてよ。あと父さんに出迎え出来ないって言っておいて。明日から学校だからもう寝るよ。」
「そうか・・・。学校へ行く準備をしてから寝なさい。いいね。あとこれ。」


というとお爺ちゃんはある封筒を差し出す。中身は予備校の書類。


「早ければあと1年で受験だぞ。家庭学習もいいが、塾へ行ってみてはどうかな。呑気にしていては失敗するぞ。」
「んん・・・そうだね・・・。父さんはどういうかな・・・。」
「ま、こういうことに関しては何も言わないだろう。費用は私が出すからね。」
「んん・・・じゃ、おやすみ・・・。」


僕は部屋のベッドに横になると予備校の書類を机に投げて携帯電話を眺める。受験勉強どころじゃないよ。僕は優希ちゃんの事や本当の父親のことが気になってしょうがないんだ。