縁 (21)傷心
まずかったかなあ・・・。優希ちゃんを傷つけてしまった。ああいう年下お嬢様タイプと初めて付き合った。女の子は付き合っていればああいうことをしても大丈夫だと思った。でも優希ちゃんは涙を流しながら僕の頬をたたいた。もちろん僕は優希ちゃんが好きだからそういうことをしたのであって、欲望を満たすためではないのはわかる。今までの女の子はみんな年上ばっかりで、初体験の相手は5歳も年上の大学生。その後何人か関係を持った年上の彼女がいたけどね・・・。優希ちゃんははじめての年下の女の子で、お嬢様だもんな・・・扱い方がわからなかった。そしてこの僕が初めての彼氏だって。気まずくて、ずっと広尾まで一言もしゃべらずに帰って来たんだよね。きっと怒っているんだと思ってそっとしておこうと、広尾駅で別れた。
「お爺ちゃん、やっぱり石川のお婆ちゃんちに行くよ。」
と、お爺ちゃんに言って、飛行機の予約を取ってもらった。ま、口うるさい父さんは石川に行くことに関しては何も言わないからね。
僕は優希ちゃんに何も告げずに、次の日の朝一番のANA751便で石川県小松空港へ降り立った。ここから、お婆ちゃんちがある加賀温泉郷駅までの夏休み臨時バスに乗る。バスで約30分。駅に着けば、お婆ちゃんちのホテルの送迎バスに乗ればいい。
色々考えながら景色を見ていた。そしていつの間にか眠ってしまったようだ。そしてある衝撃で目が覚め、体中に激痛が走る。どこからかぽたぽたと落ちてくる自分のものであろう血。そして今まで見ていた景色がおかしい・・・。なんとバスが横転しているんだと冷静に感じた途端、僕は激痛のため気を失ってしまったみたいだ。
「孝志!孝志!」
聞きなれた声で僕は目覚める。その声は石川のお婆ちゃん。お婆ちゃんは僕がこのバスに乗っていたのを知っているから、仕事を放って急いでやってきたみたいだ。着物姿に白衣とマスクをしている。
「ばあちゃん・・・ここは?」
「病院の集中治療室。良かった・・・気がついて・・・。今お爺ちゃんとお母さんがこちらへ向かっているからね。」
「なんか遭ったの?よく覚えてないんだけど・・・。」
「バスが横転事故を起こして・・・。お婆ちゃんニュース見て驚いちゃった・・・。その後すぐに警察から連絡があってね、仕事を放ってきたのよ。」
そっか・・・事故に遭ったのか・・・。警察も僕の身分証明書と、お爺ちゃん名義のVISA家族カードから照会してお婆ちゃんに連絡を取ったらしい。ここらでは遠藤春樹や遠藤芳樹といえば有名だからね、すぐに身元がわかり、連絡がいったらしい。
頭を打ったのかな、ズキズキ痛み、体中には包帯だらけ。輸血までされている。お爺ちゃんと母さんは羽田発15時30分の飛行機でここまで来るらしい。やはり父さんは来ないみたいだ。しょうがないか・・・代議士だもんな・・・。