縁 (13)スカウト?
珍しく優希ちゃんから電話が入る。
「あのね、孝志君。お姉ちゃんのマネージャーさんから電話があってね、連絡先教えて欲しいって言うのよ。教えていいのかなあ・・・。」
「どうして?」
「なんか知らないけれど、話がしたいって言うらしいの。」
「話?なんだろ・・・。」
「もしかして孝志君かっこいいから、スカウト?」
話を聞くくらいならいいかなあなんて思って携帯電話の番号を教えてもいいって言ったんだ。もちろんあの仁科美咲さんのマネージャーさんからというし・・・。まあ教えちゃってもいいよね。するとなんだか早い。夜遅いけれどいい?って電話があって、明日お昼にランチ食べながら話がしたいって言うんだ。もちろん仁科美咲付きで。都内の某ホテルレストラン個室で・・・。まあ明日は日曜日だし、昼間なら父さんいないからいいと返事・・・。そのことを優希ちゃんに言うと、優希ちゃんは絶対スカウトだって言うんだよね。
次の日、おしゃれしてとは言わないが、ポロシャツとGパンでだけど、指定されたホテルへ行く。すると昨日のマネージャーさんが僕を待っていて、レストランの個室へ。結構いいホテルレストランの個室・・・。個室に入ると中年の男数人と、仁科美咲さんがいる。
「社長、例の男の子です。いかがでしょう。」
「ほう・・・。感じのいい子じゃないか・・・。座ったらいいよ。」
社長だって???僕は指定された椅子に腰掛けると、名刺が手元に・・・。やはり仁科美咲さんが所属しているプロダクション社長。最近急成長してきた大手の芸能プロダクション。筆頭芸能人が仁科美咲さんで・・・。
「君、モデルしてみないかな。丁度、美咲の相手役を探していてね。なかなか体型と身長、そして雰囲気が合う子がいないんだよ。いい話だと思うんだけど・・・。で、名前を聞かせてくれないかな・・・。」
僕は一瞬揺らいだ。憧れの仁科美咲さんの相手役?
「遠藤孝志です。高校2年です。でも、うちの父がきっと反対します。厳しいから・・・。」
「お父様は何している?」
「石川県選出の衆議院議員です。ご存知ですか遠藤芳樹を・・・。」
「んん。そう・・・お父様が代議士ですか・・・・。あなたは未成年ですからね・・・保護者の同意がないと・・・。でもぜひ来て欲しいのです。」
それならお爺ちゃんなら僕に激甘だから許してくれるかなって思って、爺ちゃんの携帯番号を知らせておいた。
「このあと時間ある?2、3時間でいいからね。」
「まあありますけれど・・・。それくらいなら。」
「じゃあこの近くにスタジオがあるんだけれど、ちょっと美咲と撮ってみないか?」
え!仁科美咲さんと写真?ツーショットで?すると仁科美咲さんが言う。
「社長、孝志君と誤解されるような絡みはやめてくださいね。孝志君は妹の彼氏だから・・・。」
「わかってるって、参考資料として撮るだけだ。サイズだいたい見たらわかるよ。」
ランチを済ませて近くにあるスタジオへ。本格的なスタジオ。こんなのはじめて・・・。用意されて衣装を着て撮影用メイクまでされ、色々ポーズをつけて何枚も撮られた。はじめは緊張のあまり顔が強張っていたけれど、だんだんコツがわかってきて表情がやんわりしてきたとカメラマンに言われる。そして何とか終了。
モニターに映し出された写真を眺めながら、仁科美咲さんが話す。
「孝志君、本当に初めて?いい表情でてるじゃん。才能あるよね?社長。」
「んん。ちょっとレッスンするだけでいいと思う。君は逸材だよ、遠藤君。本気で考えてみてよ。もちろんこちらとしては徹底的に売り込んでいくから。」
まあ興味ないわけじゃない。だって憧れの仁科美咲さんと組むんだから・・・。お爺ちゃんならわかってくれるかなあ・・・。きっと父さんは反対するに決まっている。この僕にさえあまり自由を与えないからね。