縁 (10)驚愕! | 超自己満足的自己表現

縁 (10)驚愕!

 早めの夕食を済ませ、20時前に優希ちゃんちがあるマンションまで送る。優希ちゃんと僕はじっと両手をつなぎながら、名残惜しそうに見つめあう。本当なら、ここで別れのキスなんてしたいけど、近所の目がある。特に優希ちゃんは元総理大臣である弐條雅和代議士の孫娘。なんだかんだ言ってお嬢様。両手を握って見つめるのが精一杯だった。


「期末テスト終わったし、もうすぐ夏休みだね。優希ちゃん、今度いつ会えるかなあ・・・。夏休みに入ると、いつものように毎朝会えなくなるし・・・。」
「わからない。夏休みはパパとママの仕事柄、忙しいし・・・。また電話するね。今度は江ノ島まで海水浴だね。今日買った水着持って行くから。」
「そうだね。今度は海へ行こうな。」


なんだかんだ話しながら少しでも別れることが出来ないように時間稼ぎ・・・。それは優希ちゃんも同じみたいで、気がつくと20時半。21時になれば朝から12時間一緒にいることになる。最長記録だよ。


 別れるのが惜しくてさらに色々話していると、後ろにワンボックスカーが止まる。後ろのドアが開き、降りてくる一人の女性。
「お疲れ様でした!」
「美咲、あさって6時だから寝坊すんなよ!」
「わかっていますって!6時に迎えに来てください!」


振り返るとその女性と、マネージャーらしき人と目が合う。


縁10 なななんとその女性とは、憧れの仁科美咲じゃないか!!!


え?え?え?え~~~~~~~~~!!!!

うわ~~~~!!!!

「お姉ちゃんお帰り!今日は早かったね!」


お、お姉ちゃん????


「撮影早く終わってね。あれ?優希、その人、誰?」
「うふふ。優希の彼だよ。」
「へえ・・・かっこいいじゃん。そこらのモデルよりもいい男だね。8頭身だし。」


優希ちゃんは僕に抱きつく。優希ちゃんと憧れの仁科美咲さんに囲まれた僕は、頭が真っ白になった。


「かっこいいでしょ。孝志君って言うの。麻高2年なんだよ。」
「へえ・・・やっと優希にも彼氏出来たか。はじめての。」
「やだあ・・・お姉ちゃんったら。パパには内緒だよ。きっとパパはやきもち焼くんだから。」
「わかってるって。ママにも内緒ね。筒抜けだもんあの二人。あ、はじめまして、弐條美咲です。こんなお馬鹿な妹ですが、大切にしてやってくださいね。」


といって仁科美咲さんはこの僕に手を・・・。もちろんご挨拶の握手を求めてきたんだろうけど・・・。もちろん僕は握手・・・。


「はじめまして、遠藤孝志です・・・。」


本当に驚いた。似ているだけと思っていた優希ちゃん・・・。お姉ちゃんが仁科美咲だったなんて・・・。そりゃ似てて当たり前か・・・。握手したこの手・・・。洗いたくないよな。


 優希ちゃん姉妹と別れ、自宅へ戻る。お爺ちゃんは戻ってきていた。うれしそうにしている僕を見ておじいちゃんは微笑んだ。


「本当にいい事があったんだね。久しぶりに見たよ、孝志の楽しそうな顔。お爺ちゃんはお前のそんな顔を見ることが出来て幸せだよ。」


本当に今日はびっくりしたけどね。ちょっと心が揺れる僕。こんな近くに仁科美咲がいたなんて、信じられないよ。それも優希ちゃんのお姉さんだなんて・・・。ホント世の中って狭いな・・・。