縁 (7)家庭の事情
優希ちゃんと別れ、名残惜しい。部屋はあそこかなあなんて思いながら最上階の角部屋すべてを見つめる。
ププー!!!
玄関横の地下駐車場入り口のところに立っていたからか、黒のBMWの運転手にクラクションを鳴らされてしまった。運転席の窓が開き、運転手が声をかける。
「君、危ないよ。さあ、どいてどいて。」
「あ、すみません。」
僕はさっと移動。
30代?40過ぎ?の男性。
なんとなくかっこよくて、移動したあと、この僕に微笑んで駐車場に入っていく。どうしてか知らないけれど、なんとなくその男性の事が気になる。まあ気のせいだと思うけれど・・・。
時計を見て驚く。早く帰らないと、父さんが帰ってくる。父さんが家に帰ったときに僕がいて、玄関まで出迎えないと機嫌が悪い。特に今日は日曜日。僕が出掛けていることがわかると何言われるかわからない。きっと遊びすぎだと叱られ、機嫌が悪ければ暴力を受ける。
もう僕だっていい体型。反抗すればいいんだけれど、反抗すれば、母さんにその矛先が行く。170センチない父さんと、180センチ近い僕。力の差だってあるよ。でも大好きな母さんのことを思うと反抗なんて出来やしない。そりゃ小学生の時に反抗したことがあったよ。その時はお爺ちゃんがいないところでボコボコにされて、母さんも顔にあざが出来た。普通ならDVか虐待か何かで警察に行けばいいんだけれど、その頃おじいちゃんは現役の代議士で、副総理という立場にいたから公に出来なかった。父さんもお爺ちゃんの公設秘書だったしね・・・。今だって父さんは代議士。父さん立場から言って訴えることなんて出来ない。それを知ってかしらずか、父さんは気に入らないと暴言を吐いたり、手を出したりする。
まあ帰ると何とか間に合って、父さんと母さんの出迎えが出来た。父さんからボストンバックを受け取り、父さんの書斎へ持っていく。母さんは父さんの後ろで暗い顔をして立っていた。きっと何か言われたんだろうな・・・。離婚したくても出来ない現状。それがどうしてなのか理解できないんだけどね。しちゃえばいいじゃん。何で?どうして?僕にはよくわからないよ・・・。