縁  (4)告る | 超自己満足的自己表現

縁  (4)告る

 優希ちゃんと出会ってふた月後、僕は意を決して告ることにした。衣替えが終わった日の朝。いつものように、優希ちゃんと顔を合わす。


縁 4 「おはよう。」
「おはようございます。」
「ちょっと放課後時間ある?」
「ちょっとなら・・・。」
「じゃあ、有栖川記念公園のブランコの前、5時に来れる?」
「うん・・・。じゃあ・・・。」


何とか約束を取り付けて別れる。優希ちゃんの顔、ちょっと反応が気になるけれど、まあ振られてもいいかなあなんて思いながら、学校へ急ぐ。



 学校では一日ドキドキしながら授業を受けていた。柔道の授業でも上の空で、いつもなら出来る受身をまずってしまって保健室送りになった。まあ病院行くほどじゃなかったからよかったけれど、頬に擦り傷と、足に軽い捻挫をしてしまったんだ。ついてないなあ・・・。きっと優希ちゃんに振られてしまうんだろうなあ・・・。


「よお、遠藤。放課後みんなでカラオケ行こうってことになったんだけど、お前も行くか?」


とクラスメイトの一人が声をかける。もちろん今日僕には先約が・・・。


「悪い、また今度な。今日は先約があるんだよ。」
「女か?今日だってなんだかボ~~ッとしてさ。おかしいぞ遠藤。」
「まあいいじゃん。楽しんでこいよ。」


僕は苦笑して、今日怪我した足を引きずって自転車に乗る。痛さであまり早く進まないんだよね。時間がどんどん近づいてくる。間に合うか?まあ何とか間に合って自転車を止め待ち合わせ場所へ。優希ちゃん発見!でも制服じゃない。


「待った?」
「ううん・・・。さっき来たの。」


優希ちゃんの手にはここの前にあるナショナル麻布スーパーの袋。そこには食材が入っていた。


「あまり時間がないの。家に帰って夕ご飯作らないといけないの。今日パパがいるから・・・。」
「そう・・・。」
「何?話って・・・。」


時間がないなら率直にいわないとな・・・。僕は意を決して言うんだ。


「あのね、優希ちゃん。僕さ、君が・・・。」


じっと僕の顔を見て微笑む優希ちゃん。超可愛い。


「あのさ、優希ちゃんって、彼氏いるの?」
「ん?いないよ。だってね、彼氏作ってる暇ないもん。」
「え?」
「だってね、うち、両親は共働きなの。パパは国際線のパイロットだから週のほとんどいないし、ママはいい歳して国内線のCAしているから、夜にならないと帰ってこないの。お姉ちゃんは仕事をしながら大学に行ってるし、双子のお兄ちゃんがいるけど、まったく家事しないもん。だから私が全部しているの。家事。だから彼氏作る暇ないから・・・。で、何?」


ああ!振られる可能性99%!!!!


「遠藤さん、頬怪我したの?」


そういうと優希ちゃんは僕の頬の怪我を触ろうとする。そして僕は優希ちゃんの手をぐっと引き寄せて抱きしめる。


「優希ちゃん、僕さ、君が好きなんだ・・・。初めて会った日から・・・。」
「え?」


優希ちゃんは顔を真っ赤にさせて僕の顔を見る。


「僕、君の彼氏になっちゃいけないかな?無理?」


優希ちゃんは僕の胸に顔を埋める。僕の胸のドキドキが優希ちゃんに伝わったかな・・・。もちろん僕は優希ちゃんの胸がドキドキしているのを感じている。少し沈黙があって、優希ちゃんは僕の顔を再び見上げる。そして頷く。


「私も遠藤さんのこと好きだったの。でも遠藤さんはかっこいいからきっと彼女いるんだろうなって思って諦めていたの。いいのかなあ・・・私なかなか会ったり出来ないよ。家の事があるから。」
「いいよ。朝顔合わせるだけでもいいし、優希ちゃんが会えるときに会ってくれたらいいから・・・。」
「うん・・・。」


周りに誰もいなかったからかなあ・・・。なんとなくいい雰囲気になっていつの間にか僕と優希ちゃんはキスをしていたんだ。


今日から僕には可愛い年下の彼女が出来た。とても可愛い彼女が。