四神降臨 復活編 第5章 復活のための誘惑 (1) 黒龍の皇子
ここはある集団の住家。夜毎奇妙な儀式が行われている。この集団は黒龍を信仰し、黒龍復活を願っている。その中に少年が一人いるのである。
「母上、この僕に何をさせようというのですか。」
とその少年が教祖といわれる女に話しかける。
「紫龍(しりゅう)。」
女は人払いをすると、少年に話しかける。
「紫龍。あなたは黒龍王の唯一の皇子として、動いてもらわなければなりません。あなたの父、黒龍王を復活させるために・・・。」
「復活???父上はどこにいるというのです?」
女は世界地図を広げ、あるところを指差す。そこは日本海溝。
「紫龍。このあたりで頻発する出来事をお前は知っているわね。そして頻発する地震。」
「はい・・・。」
「あれは、黒龍王が復活のための行動・・・。力を蓄えているというべきでしょうね・・・。信者のおかげで、黄龍にかけられた結界をずいぶん解くことができたようです。しかしあと一歩・・・・。あと一歩のところで最後の結界を破れないのでしょう・・・。」
「どのようにしたら最後の結界が・・・。」
女は若い男の耳元でこそっというのである。
「生と霊の神。玄武を味方につけなさい。そうすれば最後の結界が破れるかもしれないねえ・・・。」
「玄武?」
「聞いたことはないかい?四神のことを・・・。その中の一神。玄武。先ほど、探らせていたものから報告があってね、玄武に関するものが現れたと・・・。いいかい紫龍。そのものを誘惑し、こちらの味方につけるのです。一神欠ければ、にっくき黄龍も君臨することはない。わかりましたか?紫龍。」
女は有無を言わさずその少年を玄武に関するものの近くに潜り込ませる。それがうまく行くのか行かないのかはここにいる少年、黒龍の皇子・紫龍にかかっているのである。