四神降臨 復活編 第1章始動 総集編 1 | 超自己満足的自己表現

四神降臨 復活編 第1章始動 総集編 1

四神降臨 5-11 「朱央・・・。お前に頼みがある・・・。これをお前に預かっておいて欲しいんだ・・・。」
「龍哉様・・・。」

 あの魔王の戦いから三百年余り。世は幕末の混乱の最中。畿内某所のひっそりとした山荘に住む二人の男。一人は年老い、もう一人は若い男。年老いた男とは半龍半人の元帝、後陽成院こと、龍哉。そして若い男とは元この年老いた男の側近、朱雀の皇子源朱央。半龍半人のために人より長く生き過ぎた年老いた男の命の火は消えようとしていた。年老いた男は若い男に青と黒の勾玉を手渡す。


「もうこれは私には必要ない。朱央・・・お前が持っておいてくれ。いつ魔王が復活するかもしれない。その時のためにお前は生き続け、四神に関わる者たちを導き、この国を守って欲しい・・・。いいか朱央・・・。白の勾玉に関しては西斗の子孫が持っているであろう・・・。朱央のみが頼りだ・・・。生き字引として生き続けよ。」
「龍哉様・・・。」


年老いた者は思い出したように苦笑しながら言う。


「お前もそうだが、長生きはするものではないね・・・。私はどれほど大切な者たちの死を見届けてきたか・・・。最愛の麻耶を亡くした時ほど辛いものはなかった・・・。そして最後まで私を物の怪のように忌み嫌い、近づこうともしなかった我が息子後水尾帝誠仁・・・最後まで和解さえしなかった・・・。孫、曾孫、夜叉孫まで最期を看取ってしまった・・・。それだけじゃない・・・。私から数えて14代もの帝を見てきた・・・。やっと私は麻耶に会える・・・。やっと・・・麻耶に・・・。」
「龍哉様?」

年老いた者は力を失い、永遠の眠りにつく。そしてひっそり江戸時代初期に後陽成帝が埋葬されたとされる墓所に埋葬された。もちろんこの帝が三百年も生きていたことは公にはされていない。


 ああまた同じ夢を見てしまった・・・。龍哉様の夢を・・・。もうあれから150年近く経とうとしているのに・・・。本当にここ半年のうちに何度も・・・。それまでは龍哉様の夢など見たことはなかった・・・。

 この私、源朱央は今年で470歳を超えてしまった。私は人じゃないからね。私は朱雀の第2皇子。見た目はまだ青年なのだが・・・。朱雀の者は四神の中で最も長生き。数千年は生きるとされている。不死鳥という者もいるが、もちろん寿命はある。500歳に満たない私などまだまだひよっこで、父である朱雀王はもうすでに1000歳を超えている。昔、私は長年宮中に仕え、隠居された後陽成院に三百年も仕えてきた。院がなくなられてからは私の末裔が守っている朱雀神社に住み、近所の者に生き神様といわれ親しまれている。まあ、私が生き神として生きていると知っているのはこの近所の者達だけだが・・・。誰も公にする者などいない。暗黙の了解というべきか。

 私はここまでさまざまな出来事を見てきた。幕末の動乱、明治政府の成立、第一次世界大戦、関東大震災、第2次世界大戦など・・・いい事から嫌な事まですべてだ。今は平成という時代。龍哉様から数えて18代目の帝(今の時代天皇というが・・・)の御世。私が生まれ育った時代とは違い、科学が進歩し、神道、陰陽道など誰も信じようとはしない。もちろん、四神の存在など伝説としてしか扱われない。本当であれば、龍哉様たちが生きていた時代に実際に起こったことを書き記し、代々伝えておきたいところなのだが、そういうことは書物にて書き記すことは禁じられている。私の記憶にのみ存在するのだ。まあ、書き記してあったとしても、伝奇物小説として扱われるのであろう・・・。本当に複雑である。
 民間には知られていないのだが、未だに政府には隠された部署が存在する。それはまあいう陰陽寮の様なもので、神仏や魔族、そして科学では解明されないことに関するものを取り扱い、極秘的に処理されている。私も実はそこに所属していて、事あるごとに依頼を受け、対処してきた。また最近複雑な依頼が来ている。

ここのところ頻繁に起こる異常気象そして頻発する地震・・・。科学では説明できないところを解明せよとの依頼である。そして私に仮の身分が与えられた。

それは学校の教師。何故教師なのかはよくわからないのだが、ある私学の高校の歴史教師としての身分が与えられたのだ。

 頻繁に起こる天変地異、そして最近よく見る龍哉様の最期の夢。野生の勘というかわからないが、関連があるのではないかと思ってしまうのだが、どうだろう。私は肌身離さず身につけている3つの赤、青、黒の勾玉を見つめ、私の住む祠にて考え込んだ。


「朱雀様。もう時間ですよ。」


と、私の末裔に当たる源亜樹が声をかける。ここの神社の神主の娘。巫女をしながら私の身の回りの手伝いをしてくれる。そしてこの時代のありとあらゆる情報を教えてくれるのだ。

「おはよう。亜樹殿。」
「もう、朱雀様たら、亜樹ちゃんでいいよ。今日は明日からの服とかをママと買いに行くんだから・・・。早く起きてご飯食べて。」
「ああ・・・。」

私と亜樹は母屋へ向かい、いつものように朝食をとる。本当にこう長く生きていると朝食も様変わりするものだ。私の場合、いつもはご飯食だが、亜樹の場合はパンとコーヒーを食べる。はじめてこれらを味わったときは驚いたが・・・。

「ねぇ朱雀様、今日は髪を切らないといけないよ。いつまでも垂らし髪じゃねぇ・・・。おかしいよ先生になるのに・・・。」
「後ろで結えばいいじゃないか・・・・。髪を切るなんてねぇ・・・。」
「そんな髪、流行らないよ・・・。近所の床屋さんが今時の髪型にしてくれるって言うから切ろうよね。今時出張してくれる床屋さんもいないよ・・・。みんな朱雀様を思ってやってくれるんだから・・・。」

まあ今まで近所以外公に姿を見せたことはなかったから、今時のことをしないといけないのは必然なのであろう。龍哉様がこの私の姿を見たらきっと苦笑されるであろうな・・・。

「もう嫌なことがまた起きたねぇ・・・。行方不明だなんて・・・。」

テレビのニュースで入る速報。なんと米軍の潜水艦が日本海溝あたりで行方不明になったという。最近多い。日本海溝あたりで頻発する船や飛行機の行方不明事件。確かこの事も調査対象に入っていた。

先生をやりながら調査などできるのであろうか。

本当に疑問である。


(つづく)