四神降臨 復活編 第1章 始動 (1) 聖天子の死
「朱央・・・。お前に頼みがある・・・。これをお前に預かっておいて欲しいんだ・・・。」
「龍哉様・・・。」
あの魔王の戦いから三百年余り。世は幕末の混乱の最中。畿内某所のひっそりとした山荘に住む二人の男。一人は年老い、もう一人は若い男。年老いた男とは半龍半人の元帝、後陽成院こと、龍哉。そして若い男とは元この年老いた男の側近、朱雀の皇子源朱央。半龍半人のために人より長く生き過ぎた年老いた男の命の火は消えようとしていた。年老いた男は若い男に青と黒の勾玉を手渡す。
「もうこれは私には必要ない。朱央・・・お前が持っておいてくれ。いつ魔王が復活するかもしれない。その時のためにお前は生き続け、四神に関わる者たちを導き、この国を守って欲しい・・・。いいか朱央・・・。白の勾玉に関しては西斗の子孫が持っているであろう・・・。朱央のみが頼りだ・・・。生き字引として生き続けよ。」
「龍哉様・・・。」
年老いた者は思い出したように苦笑しながら言う。
「お前もそうだが、長生きはするものではないね・・・。私はどれほど大切な者たちの死を見届けてきたか・・・。最愛の麻耶を亡くした時ほど辛いものはなかった・・・。そして最後まで私を物の怪のように忌み嫌い、近づこうともしなかった我が息子後水尾帝誠仁・・・最後まで和解さえしなかった・・・。孫、曾孫、夜叉孫まで最期を看取ってしまった・・・。それだけじゃない・・・。私から数えて14代もの帝を見てきた・・・。やっと私は麻耶に会える・・・。やっと・・・麻耶に・・・。」
「龍哉様?」
年老いた者は力を失い、永遠の眠りにつく。そしてひっそり江戸時代初期に後陽成帝が埋葬されたとされる墓所に埋葬された。もちろんこの帝が三百年も生きていたことは公にはされていない。
【作者からの一言】
さて始まりました。はい・・・。導入です。舞台は平成の京都でございます。
どうなるかはわかりませんが、これからもよろしくお願いします。