四神降臨 最終章 黄龍降臨 総集編③~戦国・安土桃山時代編完結
「東宮様はどうなされたの?」
麻耶姫は西斗に詰め寄る。西斗は首を横に振り、悲しげな顔をする。
「姫様、落ち着いて聞いてください。黄龍出現のためには生贄が必要であると陰陽の秘伝書に書かれておりました。あのまま龍哉様は食われてしまうのかは・・・・。わかりません・・・。とりあえず、魔王は黄龍に任せないと私たちの力ではなんとも・・・。」
魔王も黄龍同様に大型化し、魔王と黄龍は向かい合ったまま時間だけが過ぎていく。最初に仕掛けたのは魔王こと暗黒龍・・・。黄龍のクビに噛み付き、離そうとはしない。しかし黄龍はびくともせず、反対に強い力で暗黒龍は飛ばされ、倒れこむ。力の差は目に見えてわかる。黄龍にとって暗黒龍は赤子のようなもの。
「お前の正体はわかっている。」
「ふ、わしの正体だと???」
「この神獣の長、黄龍にわからぬものなどない。お前の本体は数千年前に反乱を起こし、龍族から追放された黒龍族!魔族に寝返った黒龍族!そうであろう!神獣に属する龍族にも関わらず・・・。恥を知れ!恥を・・・・。」
魔王と黄龍はぶつかり合い、激しい波動が起こる。
「力の差がわからぬか?神獣いちの聖なる力を誇る黄龍にかなう者などいない!!!」
黄龍から聖なる波動が放たれ、魔王を包み込む。
「ギャーー!!!!」
魔王はなんとか仁王立ちしながらも、苦しむ。
「おのれ!黄龍!!!!」
「黒龍よ!まだわからないというのか!」
黄龍はさらに強い光を放つ。
黄龍の聖なる光により倒れこんだ魔王であったが、最後の力を振り絞り、立ち上がると、黄龍めがけて飛び掛る。黄龍は魔王の喉元に噛み付き、力を加える。
うぐぐぐぐぐ・・・・。
魔王は泡を吹き力尽きる。黄龍は魔王を離し、魔王は地面にたたきつけられる。魔王は白目をむき、虫の息。
「黒龍を、深海奥底に封印する!」
黄龍が魔王に呪文を掛けると、魔王の体から3つの光の玉が飛び出す。赤、白、黒・・・。光の玉が飛び出したあと、魔王の体は元の黒龍の姿に戻る。黒龍の体が浮かび上がり、光を伴いながら、どこかへ飛ばされたである。
黒龍の姿が消えた後、都の空は晴れわたる。戦い終えた黄龍の前に浮かぶ、3つの光の玉。
白い玉は西方へ、
黒い玉は北方へ飛んでいった。
赤い玉は黄龍の戦いを見つめていた朱央の前に現れ、その玉は朱雀の形になる。
「朱央・・・・。」
さらに朱雀は女性の姿となる。
「朱央・・・。このような立派な姿に・・・・。」
「あなたは?」
と朱央が問いかける。
朱雀王妃は微笑みながらうなずく。
「朱央を人間界に逃がしたのは間違いではなかった。黒龍に国を襲われ、王をはじめ皆別れ別れとなったのです。私だけが黒龍につかまり、喰われてしまったのです。王の機転で前もって朱央を逃がした。ありがとう朱央・・・。これで国を復興できる・・・。もし王が国に戻らなかった暁には朱央、あなたが王となり、復興を・・・・。」
朱央は首を横に振る。
「きっと父上は生きておられます。そして私はここに残り、育ての親とともに生きます。人間として・・・。」
朱雀王妃は悲しそうな顔をしたが、別れの言葉を交わすと、朱雀の姿となり、南方の空に消えていった。
「朱央様。よろしいのですか?」
と西斗が問う。朱央は苦笑し、南の空を見つめて言う。
「ずっと人間として生きてきた。いまさら朱雀の皇子として生きてもしょうがないだろう。子供のいない育ての親たちはどうなる?私が世話をしなければね・・・・。」
「そうですか・・・・。」
西斗も空を見上げて苦笑した。
ふと麻耶姫は気がつく。
「黄龍様!!!東宮様いえ龍哉様はどこ???もしかして生贄に???」
黄龍は麻耶姫に向かって言う。
「焦るな・・・。青龍の皇子の心が清ければ清いほど、みなを愛する心があればあるほど、皇子は無事に戻るであろう。あの青龍の皇子は清く、強く、みなを愛する心を持っている。私の姿が消えたとき、必ず戻ってくる。」
「では、そのような心ではなければどうなるのですか?」
「その時はこの私に喰われ、吸収されるであろう。まあ、あの皇子はそのような心を持ってはいまい。安心なさい・・・・。さて、私はまた深い眠りにつくとする。再び魔王復活のとき、出現するだろう。」
黄龍は都を見回して言う。
「魔王のおかげで都は壊滅状態・・・。このあと、鳳凰が現れ、魔王によって壊された物を元通りにし、人々の記憶を消し去るであろう。」
「私たちの記憶までですか?」
「そこまでは私にはわからないが・・・・。」
そういうと黄龍は金色の光を放ち、姿を消す。
姿を消したあと、青白い光に包まれた龍哉が横たわっていた。
龍哉は気を失い、意識がない。麻耶姫、朱央、西斗は駆け寄り、龍哉に声をかける。
「東宮様!!!」
朱央が龍哉の体を起こし、麻耶姫が龍哉に声をかける。
「東宮様・・・。起きて・・・。東宮様!!!」
龍哉は確かに生きている。何度も何度も麻耶姫は龍哉に声をかける。
「リンビョウトウシャカイジンレツザイゼン。」
と、西斗が手刀で四縦五横に九字を切る。すると龍哉は目覚める。
「ここは???」
龍哉はゆっくり立ち上がると、胸元の4つの勾玉に気がつく。そして不意に空を見上げる。
空には聖天子出現の後この世に現れるといわれる瑞獣・鳳凰が現れ、清い光を放ちながら、都中を飛び回る。魔王との戦いによって壊されたモノが、徐々に元通りになる。
もちろん聖天子とは龍哉のことである。
その光は龍哉、麻耶姫、西斗、朱王に降り注ぐ。
鳳凰が消えた後、今までにない初夏の空になる。もちろん都の者達がみた事のないきれいな初夏の空。四人はみな微笑んだ。
「終わったね・・・。これで国は乱れることはないだろう・・・。乱れたとしても、再び四神が出現するほどではないと思う。」
そういうと龍哉は東宮御所の御殿に戻って行った。
何もなかったように時間が過ぎていく京の都。本能寺の変を起こした光秀は三日天下に終わる。信長に代わり、正親町帝の新しい後見人は秀吉。正親町帝は東宮の婚儀の後、譲位を決意する。
魔王との戦いの記憶が消えることなくいつものように東宮御所にいる四人。違うのは守護龍龍磨と、式神白狼の白老がいないことのみ。四人と龍哉の母宮以外は、龍磨と白老の存在の記憶はない。
龍哉と麻耶姫は見つめあうと、赤い顔をして微笑む。母宮も二人の表情を見てうれしさのあまり涙を流す。
婚儀は滞りなく行われ、龍哉と麻耶姫は夫婦となった。いつも寄り添い、幸せそうにする様は東宮御所中を和ました。もちろん祖父である正親町帝も、二人仲のよさに微笑む。
「あ、そうだ・・・これを皆に返すのを忘れていたよ・・・。」
と龍哉は立ち上がると、厨子に置いてある黒い塗りの箱を持ってくる。龍哉はふたを開け、一人一人に勾玉を返していく。
「多分、今までのような力はないと思うけど、お守り代わりとして持っておくといいと思う。」
みなはうなずくと、今までのように勾玉を首にかける。もちろんあの戦いのあと、西斗と麻耶姫の四神の力はなくなっている。
「東宮様、もう私には癒しの力はないのですね・・・。」
と麻耶姫は悲しそうな表情で龍哉に言う。
「麻耶、あなたにはきちんと力がありますよ。あなたが側にいるだけで、この僕は癒される。立派な癒しの力ではありませんか・・・・。」
麻耶姫は扇で真っ赤になった顔を隠し、照れ笑いをする。龍哉の麻耶姫に対する惚気話に、西斗と朱央は微笑みながら退出する。
龍哉は麻耶姫を引き寄せると、抱きしめる。
「東宮様。」
「何?麻耶。」
「麻耶は懐妊いたしました。」
「え?」
「ですから、麻耶は、東宮様のお子を懐妊しました。このおなかに東宮様との赤ちゃんがいるのです。」
龍哉は驚き、真っ赤な顔をしてマヤの顔を見つめると、満面の笑みでさらに麻耶姫を抱きしめ、麻耶姫にくちづけをする。
国は平和になり、都は活気付く。そして青龍の皇子・龍哉と、玄武の姫君麻耶姫は末永く幸せに過ごしたのです。
四神降臨~戦国・安土桃山時代編(完)
舞台は平成の京都。
影の政府組織に所属する四神に関する者の生き残り、朱雀の皇子・源朱央がメインとなって動きます。
書き方は私がよくやる日記調・・・。またくだらない内容のものを書きますが、よろしくお願いします。