四神降臨 最終章 黄龍降臨 (2)お忍び
東宮御所の庭に馬が用意される。麻耶姫のみ東宮御所に残し、龍哉をはじめごく側近の3人と、白老のみがお忍びという形で馬に乗り、御所を出る。久しぶりの京の都は武士達が徘徊し、物々しい雰囲気であった。
「今日は特に武士たちが多いね・・・。また戦でも始まるのかな・・・。」
と龍哉は朱央に聞く。
「昨日から元右大臣、織田様が本能寺に滞在とか・・・。今備前のあたりで戦が始まると聞いております。そのためではないかと・・・。」
「そうかまた始まるのか・・・たくさんの民衆がまた苦しむんだね・・・。」
本能寺に近づくほど、武士、特に足軽の数が増える。そしてなぜかおかしな雰囲気。邪気とかそういうものではなく、今からここで戦でも起こるのではないかというような雰囲気というべきか。道に武士が溢れ、なかなか前に進めなかった。
「東宮様、私が道をあけるように命じてまいります。」
「いや、いい、朱央。僕は忍んできているわけだから、遠回りでもするよ・・・。」
「しかし・・・。」
すると遠くから馬が走ってくる。
「どけどけどけ!!!!」
馬に乗った武士は龍哉たちと鉢合わせになる。
「道を譲らんか!このくそ公家ども!!!」
朱央はその言葉に反応して武士に言う。
「無礼者!!!ここにおわす方は東宮和仁親王様であられる!」
「朱央!もういい・・・。別に僕達は急いでいるわけではないから譲ってやろう・・・。」
その武士は東宮であることを知ると、馬を降り、平伏する。
「そなたに聞きたいことがある。どうしてこのように兵が多いのか・・・。物騒で困る。」
「は!よくはわかりませんが、続々と兵が本能寺周辺に集まっていることは確かであります。しかしこれは戦が始まるときにはありふれたことで・・・・。」
「もういいよ、急いでいるのでしょう。早く行きなさい。」
武士は立ち上がると頭を下げ、再び馬に乗り先を急ぐ。
やはり龍哉の胸騒ぎは収まらないようで、御所に戻った後も、脇息にもたれかかって、考え事をしているのである。
つづく