四神降臨 第4章 覚醒 (4)朱雀の過去
未だに自分の力が不思議でしょうがない朱央・・・。朱央は邸に戻り、父である左近衛大将に問う。
「父上、私はあなたの子でしょうか・・・。本日東宮御所にて不思議なことが起こりました。詳しくは申し上げられませんが、私の体が火に包まれたのです。でもちっとも熱くなかったのです。そして東宮様、麻耶様、侍従の安倍西斗と色違いの勾玉を持っております。この勾玉はなんなんですか?」
すると朱央の母君が朱央の前に座り、いうのである。
「朱央、ついにあなたの秘密を話すときがきましたね・・・。殿、いいかしら・・・。話しても・・・。」
大将は頷く。
「私の秘密?母上、どういうことでしょう・・・。」
大将は人払いをして誰もいないことを確認すると母君が言う。
「あれは20年前のことでしょうか・・・。」
結婚し、10年経っても子宝に恵まれなかったこの夫婦。子宝祈願に朱雀の奉られている社に訪れた。この源家は朱雀を祀り、崇めていた。
そしてある夜、正妻の枕元に立つ真っ赤な炎に包まれた鳥。その鳥は人型となり、夢の中でこの正妻に言うのである。
『朝、私の祠の前へ向かいなさい。きっとあなたが欲しがっていたものがある。その者を大切に育てよ。きっとその者はあなた方を助け、一族どころか国の平和と繁栄をもたらすであろう・・・。』
そういうと火に包まれた鳥は姿を消す。正妻は目覚め、夢のお告げどおりに朱雀が祀られている祠に向かう。すると弱々しい赤子の泣き声がするのである。祠の前で置き去りにされている赤子を抱き上げ、あやしてみるとその赤子は泣き止んで笑う。
「もしかして昨日の夢・・・・。このことだったの?」
と正妻は思い、この祠を祭っている神主に夢のことと、朝の出来事を包み隠さず話す。
「ほう・・・夢に火の鳥が・・・・。それはまさしく朱雀・・・。そのお告げどおりになさいませ・・・。その子はきっとお告げのような子に成長するでしょう・・・。」
正妻はその赤子を引き取り、源家の嫡男として育てたのである。
もちろんこれは頭中将、源朱央のことである。