四神降臨 第4章 覚醒 (3)朱雀
太陽の光が失われ、夜のように暗くなった。白老をはじめ、守護龍・龍磨が表に降りる。異様な雲は徐々に東宮御所に近づいてくる。そして感じる強い邪気。今までの邪気ではないほど強い。白老はその邪気に身震いし、耳を後ろにし、尻尾を丸める。もちろん龍磨も同じように感じている。
「麻耶姫は中に居なさい。」
と龍哉は西斗と朱央を連れ表に出る。西斗は懐から陰陽師の札と剣を、朱央は従者に命じて弓矢と剣を用意し身構える。
「キャー!」
と、龍哉の母宮のいる御殿から聞こえる悲鳴。御殿のほうからある女官が走ってきて龍哉に申し上げる。
「東宮様!物の怪が!!!物の怪が、姫宮様をさらって・・・・。」
「え!母上様を!?」
龍哉たちは急いで母宮のいる御殿に向かう。御殿の屋根には見たことのない黒い獣。黒い獣の背中には気絶した母宮が横たわっていた。黒い獣は龍哉たちを睨みつけると、こういう。
『我は魔王の腹心、魔獣黒狼。魔王の命により、青龍寵愛の姫君を頂いていく。ふふふふ・・・まだ覚醒していないガキどもに我を倒すことなど出来まい。やれるものならやってみろ!受けてたつぞ!』
そういうと黒狼は遠吠えをし、大笑いをする。
「龍磨!変化を許す!」
「御意!」
龍磨は龍に変化し、黒狼に近づき立ち向かうが、跳ね返されてしまう。西斗は札を取り出し、呪文を唱えながら指で何かを書き、黒狼に向かっていう。
『疾風!』
札が消えると同時に突然旋風が起こり、黒狼を包み込む。さらに西斗は白老に札をつけ、呪文を唱え、白老にいう。
「行け!白老!姫宮を助けろ!」
白老は疾風の如く空に舞い上がり、黒狼が包まれている旋風の中に飛び込み、黒狼と戦いつつも、黒狼の背に乗せられている姫宮を助け出すことが出来たのである。
朱央は弓矢を構え黒狼めがけて弓矢を放とうとすると、朱央の体が真っ赤な炎に包まれ、その炎は朱雀の形をして朱央が放った矢と一体化し、黒狼に襲い掛かった。
『ギャ~~~~~~~~~~!!!!』
その矢は見事黒狼の額に命中し、黒狼はもがき苦しみ、炎に包まれる。さらに止めを刺すかのように朱央は叫ぶ。
『烈火!!!』
朱央の指の先から火の鳥・朱雀が飛び出し、猛烈な炎がもがき苦しむ黒狼に襲い掛かり、黒狼は焼き尽くされてしまったのである。
朱央の胸元に隠されていた赤い勾玉の光が消え、朱央は正気に戻る。そして自分の両手の平を広げ、不思議そうに呟く。
「い、今・・・わたしは何をしたんだろう・・・。」
後ろを振り返ると朱雀の出現に驚く龍磨たち。その側には怪我をし横たわる変化後の龍磨と、式神白老・・・。龍哉は助け出された母宮を抱きかかえ、朱央の事をじっと見ていた。
東宮の寝殿から飛び出してきた麻耶姫。白老と龍磨の惨状に驚く。怪我をし息絶え絶えの白老と龍磨。麻耶姫はありったけの癒しの力で白老と龍磨を包み込む。徐々に傷口はふさがり、白老と龍磨は意識を取り戻し、龍磨はいつもの人型に戻る。
母宮の御殿は燃え上がり、東宮御所内をはじめ、内裏から消火のための人員が集まり、母宮の御殿を消火する。龍哉の寝殿と離れていたためか、延焼は免れ、母宮の御殿のみ全焼で済んだ。
西斗が気を利かし、陰陽の秘術で東宮御所内の者達の魔族襲来と、龍磨変化などの記憶を消した。記録上では東宮御所内の火災として処理されたのである。
つづく・・・