四神降臨 第3章 覚醒の兆し (11)流鏑馬の宴 | 超自己満足的自己表現

四神降臨 第3章 覚醒の兆し (11)流鏑馬の宴

 龍哉が覚醒したのかどうかわからないまま、ただ時間が過ぎる。


 いまだ朗らかな東宮に戻らないことを心配した帝は、豊楽院にて東宮を励ます流鏑馬の宴を催す。小さい頃より武芸に親しんだ龍哉。帝はきっと東宮が元気になるであろうと企画したのである。


帝の横に東宮、そして几帳を隔て、東宮妃となる麻耶姫が控えている。もちろん東宮侍従の龍磨と西斗。母宮まで。


武官文官を問わず、流鏑馬に自信がある者達がたくさん集まり流鏑馬をする。さすが自信のあるモノばかり、次々と見事に決めていく。


その中に一際優れた武官が一人。

馬に乗る姿、矢を放つ姿はまるで鳥が舞うようで会場の人々は魅了される。


龍哉はその武官にひきつけられる。


頭中将源朱央 「主上、あの者は?」
「確か左近衛中将。左大将の嫡男だよ。歳は二十歳。」


帝は左近衛中将を側に呼び、褒美を与える。


「東宮様、はじめてお目にかかります。左近中将源朱央(みなもとすおう)と申します。」


左近中将は東宮に平伏し、褒美を帝の侍従から受け取ると下がっていく。


源朱央を最後に、流鏑馬が終わり、酒宴が行われる。酒と肴が帝より振舞われ、無礼講の宴が始まる。龍哉は源朱央が気になってしょうがない様子で、じっと酒を飲みながら見つめている。それに気がついた帝は龍哉に言う。


「東宮、左近中将がどうかしたのか?もしよければ、お前の蔵人として取り立てることも可能だが・・・。もともとこの中から気に入った者を東宮職として取り立てようと思っていたのだ。武芸に優れた者も必要であろう。」
「はい・・・。そのようにお願いします。」


次の日、臨時の除目が発表される。


『従四位左近中将 源朱央朝臣 東宮職蔵人頭兼任とする。』


この日から源朱央は頭中将と呼ばれるようになり、東宮の側近として扱われることとなる。