四神降臨 第3章 覚醒の兆候 (10)癒しの力
「東宮様!」
玄武の姫君麻耶は龍磨の制止を振り切り、龍哉のいる御簾の中へ入る。
覚醒前の痛みに苦しみもがく龍哉の姿に絶句する麻耶姫。痛みが絶頂に達した龍哉は麻耶姫が側にいることさせ気づかない様子でもがいている。
麻耶姫は重い衣を脱ぎ、小袖長袴姿になると、龍哉を抱きしめる。
すると光る麻耶姫の黒の勾玉。
麻耶姫の体は光り、龍哉の体を包み込む。
これが玄武の癒しの力というものか。
次第に龍哉の表情は穏やかになり、痛みが徐々に薄れてくる。
「東宮様・・・。御可哀想・・・。どうしてこのような苦しみを味あわなければならないのでしょうか?」
「麻耶姫・・・?どうしてここに?」
「東宮様の苦しそうな声が聞こえましたので・・・東宮様の命を背き、東宮様の御簾の中へ入ってしまいました・・・。申し訳ありませんでした・・・。」
「いい・・・。なんとも無様な姿を見せてしまったようだね・・・。」
東宮は麻耶姫から離れると顔を赤らめ、微笑む。
その顔を見た麻耶姫も安堵の表情で微笑み返した。