四神降臨 第3章 覚醒の兆し (6)生と死の神
あの魔物の件の後、夜が明け、東宮侍従安倍西斗が出仕してくる。もちろん懐には白老。龍哉は東宮付の女房たちを下がらせ、昨夜の出来事を話す。
「白老。お前の意見が聞きたい。西斗、白老をここに・・・。」「御意。」
西斗は懐から式神白狼を出し、龍哉の前に座らせる。そして昨日のことを詳しく話す。
『なるほど・・・。ついにそのような魔物を使わせましたか・・・。本当に危のうございました。そのまま契りがあったとすれば、龍哉様の力は消滅していたかもしれません・・・。他に何かされませんでしたか?』
「くちづけをされたが・・・。あとは左頬に引っかき傷・・・。」
白老は考えつつ、溜め息をつく。
『多分何もないとは思いますが、肌のふれあいから力を奪ってしまう術があるのも確かなことで・・・。当分様子を見られたほうがよろしいかと・・・。多分守護龍が封じ込めることが出来たくらいの魔物であれば、そう大して力のある魔物ではないでしょうなあ・・・。』
「なあ、白老。麻耶姫に、僕の秘密を話したほうがいいのかなあ・・・。麻耶姫は気がついていないようだけど、姫は玄武を宿っている。そして不思議な力を持っている。また昨日のようなことがあっては困る。」
『はい・・・。その方がいいかもしれません。あの姫も龍哉様、西斗と同じ四神の勾玉を持つ者・・・。特に玄武はこちらにつかないと大変な目に遭うことが・・・。』
「大変な目・・・・?」
『玄武は生と霊を司る神・・・。霊とは死を意味する。玄武の力を持てば、生かすことも絶やすことも容易い事・・・。魔王に玄武が付けばどうなるかお分かりですか?龍哉様・・・。』
龍哉は白老の言葉にハッとする。
魔王に付けば死の神になりえるということに気づいたのである。
龍哉は麻耶姫に四神についてを、そして自分や西斗、龍磨、白老のことを包み隠さず話すことに決めたのである。