うまのきもち~ある競走馬物語 (11)僕と竹下悠の結末 【完結】
僕は獣医さんのところにいた。
いろいろ検査されて、痛い足に何かをつけられ、やっと帰ってきた栗東の厩舎。
厩舎のみんなが僕の周りを取り囲んで何か話している。もちろんオーナーのおっちゃんも一緒・・・。すごく残念そうな顔で僕を見ている。
ここに帰ってこれたってことは故障して安楽死ってことはなくなったってことか?
数頭そういうやつを見てきた。
レース行ったっきり帰ってこなかったやつを・・・。
僕はどうなるんだ?
するとオーナーのおっちゃんがやってくる。
「とりあえず、北海道の生まれた牧場に帰ろう・・・。そのあとはまだ決まっていないけれど・・・。もうレースに出なくていいからね・・・。」
ええ!もうレースに出れないって???
厩務員さんは僕を撫でながら言ったんだ。
「もう競争能力をなくしたんだ・・・。怪我が治ったら走ったりは出来るんだけどね、レースは無理なんだって・・・。」
そうか・・・もう競争できないんだ・・・。
結構楽しくなってきたところなのにな・・・。
人を乗せるってこともやめたほうがいいらしい・・・。
ということは乗馬行きって言うのも無理か・・・。
数日して僕は北海道に戻った。
厩務員さんともお別れ・・・。
厩務員さんは泣いていたんだよね・・・。
オーナーのおっちゃんは僕の行き先が決まらなかったら、引き取るっていってくれたんだ・・・。
でも北海道につくと僕の行き先が決まったんだ。
それは種牡馬ばかりいる牧場。
なんと僕は種牡馬になるらしい。
母さんのいい血統と、父さんの血統を残すため・・・。
妹は牝馬2冠馬だし・・・。ということで第二の人生を歩むんだ。
竹下悠はというと、例のの宝塚記念の故障事故以来、妹の騎乗変更をされ、もうオーナーのおっちゃんは竹下悠を一切使わないと断言。
(なぜか他のオーナーのおっちゃんたちも使わなくなったんだよね・・・。)
それから活躍もなくなって、いつの間にか忘れられて、競馬界から姿を消したって聞いたよ。
(実家の乗馬クラブを継いだという噂・・・)
まあそこまで落ちてしまうって事は珍しいかもしれないけれどね・・・。
ちょっと同情かな・・・。
【完】