ドリーム・クエスト (38)クリスマスパーティー
和気家は結構パーティー好きだ。
事あるごとに自宅でホームパーティー。特に年末年始は盛大。何年ぶりだろう、年末年始のパーティーに出るのは・・・。俺自身こういうのは好きやないから、年末帰りたくなかったんや。
ま、今年は彩子と正式に結婚して、初のクリスマスパーティーやしな・・・。
出たらな親父がかわいそうやろ。
親父はえらい彩子を気に入ってるんや。
才色兼備やし・・・。うんうん・・・。
特に今年は彩子が北野彩夏としてイメージキャラになったJRA で親父の馬が見事GⅠタイトル取りまくりで・・・。親父は彩子のことを幸運の女神やっていっとった。
初めて牝馬3冠を取ったワキノヒメギミにはじまり、怪我で引退したけど、ワキノカミカゼが宝塚記念を取った。その他諸々の馬がGⅠを取り、あわせて六つ。馬主中でも注目の的だった。
あ~あワキノカミカゼの引退がなかったら、有馬記念はうちの父さんのものだったのに・・・。
ま、来年クラシックが楽しみな牡馬がいるからな・・・。親父は牡馬3冠や!!!って気合入りまくり。
今のところワキノサプライズは無敗のGⅠ1勝2歳牡馬。
ホントに彩子は幸運の女神的素質があるかも知れんな。
彩子に宝くじでも買ってもらおうかな・・・。
冗談はこれくらいにしてな、今夜は政財界、医師会、競馬界総勢100人くらい集まるんだよね・・・。100人入るうちもすごいけど・・・。もちろん料理はどこかのシェフを貸切。立食形式のパーティーや。苦手だけど、名刺をたくさん名刺入れに入れておかないとね・・・。あと2年でまた選挙があるから顔を売っておかないと・・・。
彩子は俺の部屋でパーティーの準備。お気に入りのパーティードレスを着込んで、今髪の毛を整えている。化粧も念入りだ・・・。ま、俺はブラックスーツでええから楽だけど・・・。
「あ、これ母さんからのプレゼントや。ドレスに合わしたらええ。」
そう、母さんが彩子のために御用達の真珠屋さんで特注した淡いピンク色のパールのネックレス、イヤリング、指輪のセット。彩子は喜んで、それをつけることにした。俺は彩子の後ろからネックレスをつけてやった。
「ありがとう和気さん・・・。すごくきれいよね・・・。お母さんにお礼を言わなきゃ。」
彩子は薄いピンクの体の線がはっきり見えるロングドレスを着て、準備を整えた。
「どうかな・・・。おかしくない??」
すごくきれいで、この俺が独り占めしているなんて信じられないくらいだ。
「むっちゃ綺麗やで、彩子。」
俺は彩子を抱きしめて、キスをした。
「和気さん、口紅着いちゃったよ・・・。」
「いいよ。あとで拭いたら取れるし、もう一回キスさせて・・・。」
「もう和気さんったらもぅ一回だけだよ。」
ホント俺たちってラブラブだな・・・。こうしている時がもっと続けば言いなって思ったんだけど・・・現実は違うよね・・・。
「あ、今日議員バッチつけるの?」
「う、うん・・・。」
彩子はいつも着ているスーツから議員バッチを取って俺のスーツにつけてくれる。
「悪い、もう一回キスさせて・・・。」
ホント俺って彩子とキスをするのが好きみたいだ・・・。
「和気さん、いい加減にしないと怒るよ。終わったいっぱいしてあげるから。」
彩子は口紅を塗りなおして俺の口についた彩子の口紅を拭いてくれる。
そしてむっちゃ綺麗な微笑み・・・。
ホント最近まで若手超人気タレントだったんだもんな・・・。
俺たちは会場に降りて、招待客にご挨拶。やはり来ている人はみんな華やかな人ばかり・・・。元タレントの彩子の登場で、みんな俺たち二人の注目の的。もちろんこういうのが苦手なんだよね・・・。俺は一人一人に名刺を配りながら彩子と挨拶に回る。さすが彩子。笑顔が絶えないんだよね・・・。彩子は母さんを見つけると、さっきの御礼に行く。
「お母様、先ほどはとても素敵なものをありがとうございました。」
「まあ、彩子さん。よくお似合いでよかったわ。いいのよ。泰明の大切な人ですものね・・・。」
わき合い合いで話している2人を見て俺は安堵。去年の今日は嫌味たらたらで電話をかけてきた母さんが・・・。
「やっぱし綺麗だよな・・・姉さんは・・・。」
「敏明・・・。」
「泰にいはいいよな・・・俺なんて親の決めた相手としか結婚できないんだもんな・・・。」
「そんなことはないよ。俺もはじめはそう思ってたんだから。でもきっといい出会いがあるよ。俺みたいにね。」
「そうかな・・・。」
「ほら、あの子はどうかな・・・。可愛いよな・・・。」
部屋の隅のほうで一人つまらなそうな女の子を見つけた。
結構可愛い女の子で、きっと誰かが連れてきたんだろうな・・・。
彩子ほどじゃないけど、結構可愛らしい18歳くらいかな・・・。
早速敏明は声をかけていたよ。
その子は敏明が声をかけると微笑んで、つまらなさそうな顔から一転楽しそうな顔になったんだ。
「にい!今度会う約束しちゃったよ。」
「どこの子?」
「神戸の子でね、山の手学園の理事長のご令嬢だったよ。堀川鈴音ちゃんって言って・・・。歳はお姉さんと同じだよ。」
「え?22歳?見えないよ。山の手って言ったら彩子の出身校だよ。」
「何々?何はなしてるの?」
母さんと話を終えた彩子がこっちにやってきた。
「堀川鈴音って知ってるか?」
「うん知ってるよ。中学の時一度同じクラスになった。」
俺は彼女のいるほうに指を差す。
「あ、ホント。鈴音ちゃんだ。ちょっと会って来るね。」
彩子は鈴音ちゃんと話をしている。同級生の登場に2人は懐かしそうな顔をしていた。俺は敏明にいう。
「付き合うつもりか?堀川鈴音さんと。」
「出来るならしたいね。ええとこのお嬢さんなら親父も文句はいわんやろし・・・。」
「まあがんばれよ。応援したるから。お前も去年母さんを説得してくれたんやろ。彩子の事・・・。」
「ん?知ってたのか?」
「お前しかおらへんやん。母さんと面と向かって話せるのって・・・。急に母さんが綾子のこと何も言わんようになったのはおかしいと思ったんや。だから今度は俺がなんとかしたるわ。」
「にい・・・。」
結局敏明は付き合うことになったみたいや。
正月恒例のパーティーに振袖を着た堀川鈴音ちゃんが来てたのは驚いた。
もちろん敏明は親父と母さんにこの子と結婚前提に付き合うって言ってた。
突然の出来事に母さんは驚いてたけど・・・。
父さんは堀川さんのお父さんと友人やったから、すんなり決まったんだけど・・・。
あちらさんも和気家に嫁いでいいんかと言ってたみたいで・・・。
でも、結婚は3歳年上の姉ちゃんがまだお嫁に行っていないからって、そっちが決まってからになった。
結納は敏明が春、大学を卒業するし、堀川鈴音ちゃんも春卒業ってことで、それが済んでからってことになったんや。
驚いたのは弐條の嫁さんと鈴音さんのお姉さんが親友だということ。
世の中って狭いかも知れん。
それよりも、敏明、お前医師免許の国家試験どうなっとるねん・・・。