ドリーム・クエスト  (18)和気泰明の弟 | 超自己満足的自己表現

ドリーム・クエスト  (18)和気泰明の弟

 俺は母さんに頼まれて東京に来た。泰にいに渡したいもんがあるんだってよ。宅配便で送ればいいのにさ・・・。ま、東京に居る高校時代の友人に会えたからいいんだけど・・・。


以前教えてもらった麻布の家に電話したら議員宿舎にいると教えられて今向かっている。住所を見ながらたどり着く。代議士っていいところに住んでるんや・・・。赤坂の一等地やし・・・これで3LDK家賃9万ってのはいい待遇・・・。まあ泰にいはここは仮住まいらしいけど・・・。もう昨日仕事納めって聞いたから、きっと居るんやろうなって思って、泰にいの携帯に連絡取らないで直撃した。


管理人みたいな人に部屋番号を教えてもらって、部屋の前に着来、呼び鈴を押す。少し立つとドアが開く。


「和気さん、おかえり・・・。あ・・・。」
和気敏明
なんと俺の憧れの人北野彩夏ちゃんが出てきた。

もちろんこの人は泰にいの奥さんなんだけど・・・。未だに泰にいがこの彩夏ちゃんと夫婦だなんて信じられないんだよね・・・。


本名は和気彩子。泰にいより6歳年下の21歳。人気カリスマモデルからタレントになって、一時引退してたんだけど、今月復帰してCMタレントとして活動している。もちろん人気はうなぎのぼり・・・。大学卒業後、東京のテレビ局にアナウンサーとして就職する事が決まっている。泰にいと彩夏ちゃんの結婚は公にされていない。僕にとって泰にいの奥さんだから2歳年下の義理のお姉さんになるわけで・・・。


なんと今日は滅多に見られないすっぴん・・・。化粧無しでも十分いける。かわいいな・・・。


「和気さんの弟さんね。確か敏明さん。」


彩夏ちゃんは微笑んで、さらに話をする。


「和気さんはもう少ししたら帰ってくるけど?入って・・・。」
「ん?んん・・・お邪魔します。」


俺は彩夏ちゃんに誘導されてリビングのソファーに座る。


「泰にいは?」
「今日急な仕事が入って・・・。さっき電話があったからもうすぐ帰って来るよ。恥ずかしいな・・・すっぴん・・・。」


彩夏ちゃんは僕にお茶を出して、洗面所(かな?)に行ってうっすらメイクをしてくる。ホントにナチュラルメイク。彩夏ちゃんが泰にいの奥さんじゃなかったら、抱きしめてキスしたくらい可愛くって・・・。


憧れの彩子ちゃんと2人きりの部屋・・・。

ドキドキもの・・・。

それも可愛いエプロンして夕飯の支度をしている。ああこれが泰にいじゃなくて俺だったらな・・・。泰にいよりも俺のほうがお似合いだよ・・・。ほんと美女と野獣・・・。


泰にいが彩夏ちゃんとつきあっていると聞いたときは驚いて何もいえなかったけど、母さんから泰にいと彩夏ちゃんが入籍したって聞いたときはさすがにショックで寝込んでしまった・・・。あのダサくてごつい真面目だけがとりえの泰にいのどこがいいんだろう。ずっと疑問だった。


すると呼び鈴。


「和気さんだ・・・は~~~い!」


彩夏ちゃんは夕飯の支度の手を止めて、玄関に向かう。


「ただいま彩子。」


泰にいは俺が来ていることに気がつかず、彩夏ちゃんを抱きしめて彩夏ちゃんとキス・・・。

「もう!和気さん、弟さん来てるんだよ・・・。恥ずかしいよ・・・。」
「え?!」


泰にいは真っ赤な顔してこっちに向かってくる。泰にいはお堅いだけど男だと思ってた・・・。


「なんや。敏明。来る時くらい電話しろ。」
「母さんから泰にいの荷物を預かってきた。送ればいいのにさ・・・。」


俺は母さんから預かった荷物を泰にいに渡す。結構重かったんだからな。中には泰にいのスーツとか生活用品とか入っていた。もちろん母さんからの手紙付。


『泰明さんへ。いつも同じスーツを着るのはやめなさい。お母さんが新しいスーツを作っておいたから、着なさいね。また今年も年末年始は帰らないつもり?どうせ彩子さんもこれないでしょうね。彩子さんはお仕事と大学でお忙しいでしょうから、足りないものがあればお母さんに言いなさい。送りますから。           母より』


もちろん母さんは泰にいと彩夏ちゃんの結婚を許していない。この前、父さんは東京の学会に出席した時、彩夏ちゃんのお父さんと会っていろいろ話したみたいだけど・・・。


父さんは彩夏ちゃんがお気に入りだからとても喜んでいる。もちろん隆明にいや亜紀ねえも何にも言わない。あの2人は芸能界ってものにまったく興味がないからな。泰にいさえ良ければいいんじゃないの?って感じで・・・。


母さんの手紙にはやはり嫌味たらたら書いているんだもんな。母さんは泰にいが勝手に結婚相手を連れてきた上に急に入籍してしまったことに相当怒っている。その上、相手は芸能人。それも一時期グラビアの仕事もしてたし・・・。代議士の妻には向いてないってさらに立腹。ま、俺も賛成はしてないけどな。


「敏明、夕飯食っていくやろ。」
「んん・・・あと泊めてくれる?」
「え?!何で泊めなあかんねん・・・。」
「いいやん。別に・・・。」


泰にいは苦笑して彩夏ちゃんの夕飯の支度を手伝っていた。ほんま彩夏ちゃんといる泰にいは思ってた泰にいと違う。実家にいるときは無表情で、黙々と何かやっているって感じのにいでぱっとしないさえないにいやったのに、彩夏ちゃんといる時は朗らかで、別人。時折楽しそうに笑ったりなんかして・・・。そうだ、昔の泰にいはこんなんだった・・・。中学受験始める前の泰にいはこんなんだった・・・。


彩夏ちゃんの料理はとてもおいしくって、泰にいと彩夏ちゃんはとても楽しそうに笑いながら食べている。いい家庭だね・・・。母さんにもこんな泰にいの表情を見せてやりたいよ。何年ぶり?もう20年近くこんな泰にいの表情は見ていないよ。


夕食の片づけをまた泰にいと彩夏ちゃんは楽しく話しながらしている。そしてそのあとお茶を飲みながらいろいろ話した。


「彩夏ちゃんは、どこの局に行くの?」
「FTVだよ。これからねテレビ出演はほとんどFTVなんだよ。また今度大阪のラジオに出るからね。久しぶりに大阪に帰れるから楽しみなの。ね、和気さんも帰ろうよ。」
「そうだね。」


彩夏ちゃんと泰にいは微笑みながら見つめ合っている。

彩夏ちゃんもこういう表情するんだ・・・。

どんな写真やテレビでもみたことない表情・・・。

2人は幸せなんだ・・・・。


「敏明、悪いけど、ソファーで寝ろよ。彩子、毛布出してやって・・・。」
「うん。」


彩夏ちゃんは微笑んで俺のために毛布を2枚用意してくれた。


「和気さん、彩子、南麻布のマンションに帰るね。」
「え?いいやん・・・。」
「だって・・・。」
「じゃ、彩子、車で送ったるわ・・・。敏明、留守番頼むわ・・・。」


彩夏ちゃんは荷物をまとめてから、コートとマフラー手袋をして泰にいと共に部屋を出て行った。

一時間ほどして泰にいは帰ってきた。

ホントに泰にいは幸せそうな顔しちゃって・・・。

絶対実家では見せない顔だよ・・・。


「ごめんな留守番させて・・・。年明けまでここにいる予定やったのに・・・。邪魔すんなよ。」
「で、にいは地元に帰るん?」
「さあね。今日みたいに急に呼び出しがあるかも知れんしな。地元は二階堂にたのんでるからな。ま、彩子が帰るんなら俺も帰るか・・・・。」


泰にいは俺のために風呂まで沸かしてくれて、先に入れとも言ってくれた。

こんなに泰にいは優しかったっけ?

随分変わったよな・・・ここ数年で・・・。

泰にいと彩夏ちゃんが入籍してもうすぐ1年になるんだよな・・・。

このまま式しないでこのままの生活をするんだろうか?


「にい、どうすんの?もうすぐ1周年やろ。何かするんか?」
「ん?んん・・・。考えてるんやけどな・・・。彩子にドレスぐらいは着せてやりたいんやけど・・・。俺の知り合いでそういうとこないからな・・・・。2人で写真くらいは撮りたいんや。どっか口堅くてすぐにやってくれるとこはないか?」


そういえば、高校の友人でいたな・・・。貸衣装屋と写真館を一緒にしているとこ・・・。親友って程じゃないし・・・。大学の友人にいないかな・・・。居たような気が・・・。


「にい、任せとけ。探しておく。」
「そうか、任せていいかな・・・。絶対俺と彩子のことを口外しないとこやで。」
「おう!」


ま、帰ったら電話しまくりや。友人に知らんか?って聞きまくってな・・・。俺は結構友人多いからな、どこか見つかるやろ。

あれ?

何で俺は泰にいに協力的なんや?

反対派なのに・・・。

おかしいおかしい・・・・。