ドリーム・クエスト (14)内々定!~どこにすればいい???
大阪から帰ってきて何日たったのかな・・・。もう返事の期限がとっくに過ぎたFと、A、そしてテレビAから返事があった。ってことはTとMはだめだったってことね・・・。よく考えるとテレビAとAって同じ系列局。TとMもそう・・・。ということはやはりその局のイメージに合うか合わないか、なのかな・・・。FとテレビTに関しては取締役面接がありますって言われた。Aか・・・。在阪局なのよな・・・。一応内々定ってことを知らされた。
「A放送受かったん?すごいやん。おめでとう!」
もう寝る前の和気さんはすごく喜んでくれた。大阪か・・・。
「和気さん、まだFTVとテレビAの最終面接が・・・。」
「気軽に受けて来いよ。とりあえず、ひとつは内々定もらったんやし・・・。いつや?今度の面接は?」
「明日と明後日・・・。出来ればこっちの局に行きたいな・・・。」
「何でや?」
「だって大阪勤務だったら、和気さんと別居だよ。」
「あ!!!!そうや~~~~~!だめやだめ!大阪は地元やからえっかなって思ったんやけどそうや、俺はなかなか地元に帰られんのやった!!!!」
今頃気づいたんだね・・・和気さん・・・・。
「じゃあ、俺が明日と明後日の面接受かるようにおまじないをしたる。」
和気さんは彩子をそっと押し倒して久しぶりに・・・。ずっと彩子は就職活動の疲れから、ベッドに入ると和気さんとの夜の夫婦生活をする前に寝ちゃってたんだもん・・・。やっぱり大学行きながらの就職活動って疲れるよね・・・。和気さんは私にパワーをいっぱいくれた。そういえば和気さんと付き合うようになってからだもんね、何事にも上手く行くようになったのは・・・。和気さんは彩子を抱きながら言ったの。
「就職活動終わったら、旅行に行かへん?」
「旅行?」
「遠くにはいけないけれど、休みを取っていこうや。」
「どこ?」
「京都と奈良・・・。彩子と結婚してお盆に墓参りに行こうと思ってたんやけどな、夏にいろいろあったやん。行けんかったやろ。だから俺らの入籍報告もかねて墓参りに行こうや。」
「でもなんで京都と奈良?」
「あのな、うちの和気家の発祥は岡山の和気町なんやけどな、奈良にも小さいながらむっちゃ古いお墓があるしな、京都高雄の神護寺はうちの氏寺なんや。先祖代々のお墓がある。観光半分お参り半分かな・・・。いいやろ。」
ふうん・・・すごく古い家系だって知っていたけどね・・・。まあうちも平安時代中期ぐらいからのおうちだし・・・。よくわかんないけど・・・。がんばって和気さんと旅行に行くんだ。久しぶりだよね・・・和気さんと一緒に泊まりで出かけるって・・・。
次の日さあ!最終面接。もう早く決めて和気さんと旅行に行くんだ。朝早く起きて!気合入れて、きちんと髪とお化粧を清楚に・・・印象よく整えて・・・。さあお台場!FTV!なんと面接は4人男一人に女三人・・・。男の子ってこの前声をかけてきたうちの一人・・・。ああ、いやだな・・・。もしここ通ったら一緒に仕事するのか・・・。
「やあ、また会ったね。俺たち縁がありそうだ。俺の名前は柳生弘(やぎゅうひろむ)よろしく。」
(ないない・・・。)
彩子はしつこい男が嫌い!ま、和気さんと比べてスタイルいいし、テレビ向きって感じだけどね・・・。彩子はホントにこんな男嫌い。
「和気彩子さんどうぞ。」
え?今日は彩子からなの?中に入ると社長さんとか、ずらっと取締役ばかり並んでいる。彩子お得意の業務用スマイルで面接開始よ。もちろんモデル時代に鍛えた綺麗に見える座り方で座って・・・。和気さん、彩子、がんばるからね。前の面接と違って和やかなのは気のせいなのかな・・・。聞かれたことにすらすら微笑みながら答えるの。聞いた話によると、ここで内々定がいただけるか、即わかるみたい。さあ!そろそろ結果が・・・。
「ところで、和気さんはほかにどこか内々定をもらっているの?」
「はい・・・。一応大阪のA放送に・・・。」
「そう、ではそちらをすぐに断ってもらってもいいでしょうか。ぜひうちに来ていただきたい人材です。」
「え?」
「和気さんは、こういう世界に慣れていますからね。即戦力としてきていただきたいくらいです。話題性もあるし・・・。で、まだどこか受けるのですか?」
「はい・・・。あとTVAを・・・。」
「そうですか。では内々定を出しますので、結果が出次第、よく考えて返事をください。まあうちとしては条件面は考慮させていただきますが。」
封筒に入った書類を渡され、彩子は面接室を出たの。もちろん中身は内々定の書類と、これからのことについて書かれた紙。
彩子はね、きちんと挨拶をして局を出たの。足取り軽やか・・・。ついスキップなんかでちゃったりしてね・・・。朝、和気さんは結果出たら早く連絡ちょうだいって言ってたけど、内緒にして驚かせてやるんだ。明日はテレビ朝日か・・・。通勤はこっちのほうが近いんだよね・・・。
「ちょっと待ってよ!和気さん!」
あああのしつこい男か・・・。彩子は溜め息をついて振り返ったのよ。
「俺も内々定もらったよ。ほら!」
見たくもない。
「ちょっとお茶でもしない?」
もちろん丁重にお断り。早く帰って夕飯の買い物に行かなきゃ。すると和気さんからの電話。
『もしもし?彩子?どうやった?』
「内緒。で、何?」
『今日さ、飲み会が入ってな。夜いらんわ。で、どうだったの?』
「和気さん、早く帰ってきたら教えてあげるよ。」
『え~~~~!じゃあ断って早く帰るわあ。ちゃんと夕飯作っといてな。』
「わかったよ。早く帰ってきてよ。超特急で。仕事残ったら弐條のお兄さんに任せてさ。」
『あいよ。弐條に任せて帰るわあ・・・。』
私はニコニコがおで電話を切ると、まだあの男がしつこく側にいるの。
「ねえ誰から電話?」
「家の人。家族から。ごめんね、早く帰って夕飯の支度しないといけないから。」
彩子は走ってその男から逃げたわよ。今日はこれから大学ないから、東京臨海高速鉄道東京テレポートから大崎まで出て恵比寿、そして東京メトロの広尾まで帰ってくる。上手くいったら30分ちょっとか・・・。買い物を済ませてやっとのことで家に戻ってきたの。ああ、もう5時か・・・。6時には和気さん帰って来るよ・・・。さっさと着替えてお化粧を落としたあと、急いで夕飯の支度。パパももう帰ってくるんだよね・・・。
「ただいま・・・。」
あ!何でこんなに早く帰ってくるのよ。和気さんはもう!
パパがいない時は決まって和気さんは彩子にただいまのキスをしてくるの。今日は何?ぎゅっと抱きしめられて、濃厚なキス・・・。いつもは頬か軽く唇に・・・。
「どうやった?今日さ昼から仕事どころじゃなかったんや・・・。」
「ん?うかったよ。ぜひ来て欲しいって・・・。明日は朝日だけど?」
「良かったやん!明日もガンバレや。A放送はどうするんや?」
「大阪は別居になるから断るよ。和気さんはなしてよ・・・。ご飯作れないよ。」
「あ、ごめんごめん・・・。」
パパは思ったよりも帰ってくるのが遅そうだったから、先に2人で食事を済ませたの。もちろん今日の出来事はすべて話したの。あの男のこともね。和気さんは笑っていたけど。
「じゃ、休みを調整しておくよ。こういう時は広報担当が2人って楽だね・・・。」
「うん。楽しみにしているね。」
和気さんと2人で仲良く後片付けをしたの。パパは結局10時過ぎに帰ってきた。
次の日は自転車でも行けるテレビA。ここは淡々と面接が終わって、普通に内々定をもらった。Fほど、熱意は感じられない。今日のうちにA放送はお断りの電話を入れておいたし、後は熱意のあるFか、家から近く通勤楽々のテレビA・・・。このふたつからひとつ決めないと・・・。ああ悩んじゃうわ。早く返事を出さないと失礼に当たるし。本当に贅沢な悩み・・・・。あ、Fを選ぶとあの男がついてくる可能性大!いやだな・・・勘違い男っぽいしね・・・。く~~~~~~究極の選択だわね!