明るい家族計画 (10)妊夫生活~妻の入院編 2 | 超自己満足的自己表現

明るい家族計画 (10)妊夫生活~妻の入院編 2

 僕は綾乃が落ち着いたのを見計らって再び部屋に入って綾乃と会う。

「雅和さん・・・さっきはごめんなさい・・・。ひどいこと言っちゃった・・・。」

「ん?いいよ。綾乃は元気な赤ちゃんたちが生まれるようにゆっくりしてなよ。僕が出来るだけ側にいてあげるから・・・。」

「いつ家に帰れる?」

「生まれるまでこのままだって・・・。」

「そう・・・。寂しいな・・・。3ヶ月以上もこのままか・・・。」

「綾乃のおなかには赤ちゃんたちがいるじゃないか。ね、もうそろそろ僕も赤ちゃんを迎える準備をしておくからさ。名前もそろそろ決めよう。ね。」

「うん・・・。」


僕は面会時間ギリギリまで綾乃の側にいたんだ。綾乃は僕に何かいいたげな顔で、僕の顔を時折見つめてたけれど、溜め息をついて目を閉じる。


もう何日も仕事が終わるとすぐにこちらにやってきて一緒に過ごした。この日は見慣れない花が飾ってあった。


「あれ、誰か見舞いに来たの?」

「うん。田村さんが来たんだよ。秘書仲間なんでしょ。」

「田村さんが?」


明るい 田村 田村さんといえば、30歳ハーフのイケメン公設秘書。綾乃によると、面会時間すぐに来て、30分くらい話をして帰って行ったらしい。そういえば田村さんは3時ごろ官邸を出て行った。


「田村さんってかっこいい人ね。ハーフなんだって?」

「え?かっこいい?」


何で綾乃は楽しそうに話すんだろ・・・。もしかして?


「でも、雅和さんのほうがかっこいいよ。」


綾乃は微笑んで顔を赤らめる。


次の日もまた次の日も田村さんはやってきて何か話して帰るらしい。 今日はなぜか時間が一緒になった。


「田村さん、毎日綾乃のお見舞いありがとうございます。」

「いや。別に構わないよ。」


僕は田村さんを談話室に連れ込んでコーヒーをご馳走する。何で関係ないのに毎日見舞いに来るんだろう・・・。それを問いただすためにこうして2人きりになる。


「田村さん、毎日来ていただくのはありがたいのですが、どうしてですか?身内でもないのに・・・。」

「別に・・・・俺の家は元麻布。ホントにすぐそこだから。」

「でもおかしいですよ。わざわざ昼間に官邸を抜け出して・・・。」

「まあ、暇つぶしだよ。未来のファーストレディーにご挨拶しておくのもいいだろう。」


暇つぶしに訪れるほどのことかな・・・。もしかして以前問題になった丹波みたいなこと考えていないだろうな・・・。考えすぎかもしれないけれど・・・。まあ僕は丁寧にお礼を言って綾乃の部屋に戻る。まあそれ以来田村さんは来なかったけれど・・・。


入院中何事もなく、春。僕は慶應まで綾乃の卒業証書を受け取りに行った。大学のみんなは綾乃のことをすごく心配してくれていて、みんなでお見舞いに来てくれたんだ。それも卒業式の格好のまんまで。綾乃もすごく喜んで、涙ぐんでいたよ。ゼミの教授も来てくれて、ホント和やかな時間を過ごせたんだ。教授は綾乃の子供の名前を考えてやるっていってくれてね、僕はお願いすることにした。結構この教授はそういう方面にも精通している教授。きっといい名前をつけてくれるんだろう。一応性別を伝えておいたけどね・・・。


本当に綾乃は時折僕の顔を見ると溜め息をつく。


「綾乃、最近変だよ。何かいいたいことあったらいってごらんよ。」

「ん?いい・・・。」

「ほら、いってごらんよ。言いたい事いわないと、体の良くないよ・・・。」

「ホントにいい?」

「うん・・・。いってごらん。」

「あのね・・・。事故に遭った年の秋、土御門さんと会っていたんでしょ・・・。それもほぼ毎日・・・。あたしが大学行っているときに、部屋に入れて・・・。」

「え?」

「そうなんでしょ。本人から直接聞いたんだから・・・。」

「ん?んん・・・ごめんな・・・今まで黙ってて・・・。」

「まああの時はあたしのこと忘れてたからいいんだけど。」


それ以上何も言わなかったんだけど、まだ何かありそうだ。


「まだあるんじゃないの?いってごらんよ・・・。」

「あのね・・・それでね・・・土御門さんは妊娠したって・・・。捨てられたっていうの・・・。それであたし・・・急におなかが痛くなって・・・。」


え!!!そんなこと知らない!


もしかしてそれが原因の心労で切迫早産になったのか?


僕は家に帰ると桜ちゃんの携帯に電話をかけてみる。良かった、携帯番号変わっていなかった!


「本当なのか!」

『何が?』

「綾乃に言ったんだろ!僕らの関係のこと!」

『言ったわよ!だから何?!』

「妊娠したって本当なのか?!」

『なにいってんのよ。するわけないじゃない。からかっただけよ。幸せそうな顔しているから!』

「いい加減にしろ!君のせいで綾乃は・・・綾乃は入院してるんだぞ!僕の子供、死にかけたんだぞ!もちろん綾乃だって!いい加減にしろ!もう君とは会わないし、街で会っても声をかけるな!いいか!」


やっぱりもう許せない!僕はもう土御門家と縁を切るんだ!