明るい家族計画 (4) 妊夫生活~親ばかのはじまり編 2
次の日綾乃は、つわりがひどいのに、きちんとお弁当まで作ってくれた。
「綾乃、つわりが治まるまで無理してお弁当は作らなくていいよ。議員会館の食堂で食べるから・・・。」
「だって外食は栄養のバランスが悪いし・・・。忙しい雅和さんにはお弁当が一番なんだよ。」
僕は綾乃からお弁当とカバンを受け取ると綾乃にいつものように「行ってくるよ」のキスをして自宅を出た。そして朝一に議員会館に寄らずに官邸へ。まず総理大臣執務室に向かう。
いくら総理大臣の息子だと言っても官邸内では特別扱いはない。いち官房長官の公設秘書として扱われる。執務室前の秘書官たちに面会を申し出て、少し待つと、秘書官によって呼ばれ、執務室に入る。
「どうした?こんな朝早く。」
父さんは国会に行く準備をしていた。
「あのお話が・・・。」
「急いでいるから手短に頼むよ。」
「あの、父さん。私的な話で申し訳ないんですが、綾乃に子供が出来ました。」
「え?それは本当か?いつ生まれる?」
「今3ヶ月で、6月中旬に・・・。」
「そうか、この私もおじいちゃんか。また綾乃さんにお祝いの電話を入れておくよ。じゃ、急ぐから。」
父さんは嬉しそうに足早に執務室を出て行く。今日は党首討論が行われるから、本当にたくさんの秘書官や取り巻きに囲まれながら官邸を出て行ったんだ。
後は官房長官なんだけど、長官はもう国会にいってしまって、不在。
僕は官邸のデスクで国会中継を見ながら仕事を行う。先輩秘書たちは国会に行ってしまったから、僕だけ電話番。外部からの電話も扱うけれど、主に国会からの電話を受け持つ。たまに資料が足りなかったり、急な報告類をまとめたり運んだりするのが今日の僕の役目。
僕はデスクのシートの間に僕たちの赤ちゃんの超音波写真のコピーを挟んで暇さえあれば見つめて微笑む。先日2回目の検診に行ったところだからこれで2枚目。本当だったら写真をいただけないんだけど、無理言って毎回写真をもらうようにして、大事にコピーをし、持ち歩いている。
前回はまだ丸くてこれが赤ちゃん?って感じだったけれど、今回は違う。頭、胴体、そして可愛い手足がきちんと付いている。まだ5センチぐらいで10gぐらいしかないけど、一生懸命心臓を動かして動いていた。本当に感動ものだった。
先生はもうそろそろ流産の危険性はなくなってきたって言ってくれて安心したけど、まだ安定期に入っていないって言うから、出来るだけ無理させないようにしないと。
お昼の休憩時間になると、続々と先輩たちが帰ってくる。僕は写真の上に本を置いて恥ずかしそうに隠してみる。ホントに僕って親ばかかもしれない。
官房長官は総理大臣である父さんとお昼を食べながら会議をするらしい・・・。だからこちらには戻ってこない。いつものように僕はお弁当を取り出し、官邸の職員がお茶を持ってきてくれる。今日に限って職員が思いっきり写真の上の本にお茶をこぼしてくれた。
「あ、すみません、今からふきますから!」
「いいよ!僕がするから!」
職員は本を一冊ずつふきながら別の場所に移していく。僕は濡れた資料を一生懸命拭いていた。
「あ~~~~弐條さんなんですかこれ?!」
忘れてたよ、超音波写真のことを・・・。
見つかってしまった・・・。
案の定先輩たちが集まってきてしまって、みんなに見られてしまった・・・。
「実は僕の子供・・・。今、奥さんは妊娠3ヶ月なんです・・・。」
「だから最近早く帰るのか・・・・。なるほど・・・。官房長官は知っているのか?」
「今日話そうと思いまして・・・。父には朝、報告はしましたが。」
もちろんからかわれたよ・・・。
やっぱり新婚だねとか言われたりなんかして・・・。
嬉しいやら恥ずかしいやらで・・・。
一応まだ公に出来る状況でないからとくち止め・・・。
口止め料として今度の飲み会は僕のおごりになってしまった・・・。
普通おごってくれるもんだろ!
まあいいか・・・気分はいいし・・・。
やっと報告できたのは帰るギリギリ・・・。
官房長官はすごく喜んでくれて、困った事があったらなんでも言ってくれっていってくださった。まあこの人は僕らの仲人さんでもあるし、ご近所に住んでおられるからね・・・。綾乃に奥様は母親のように接してくれているし、綾乃はよく相談とかもしているらしいから、安心かもしれない・・・。これからいろいろ配慮してくれるらしいし、仙台行きも僕の代わりに私設秘書がしてくれるらしいから助かったよ。
まあお手当て分の給料は減るからしょうがないか・・・。
まあ周りの人たちに報告できたから安心・・・。
あとは綾乃のお父さんだよね・・・。
約束と違うから怒られるかな・・・。
ちょっと怖い・・・。
(作者から^^;)
イラストの超音波写真はまさしく私のなのです^^;うちの双子っちが写っています。
よく見たら赤ちゃん状のモノが見えるのがわかりますか?あれはうちの3女です。
体形でわかるんです。丸々ぷっくり体形・・・。そしてなんとなく右側に見えるのがうちの長男。
おなかの中でもがりがり君。
実はこの小説、妊娠時の場面は実際の話がベースになっているんです。
予想外、想定外の話から・・・。すべてじゃないですけれど、詳しい描写はやはり経験者じゃないと・・・。
そういえば3回目の妊娠はみんなに怒られたんですよ・・・。双子だったから・・・4人になるわけでしょ。もう四年も前のことです。
また該当する場面が出てきたら、こうしてご報告を・・・。