明るい家族計画 (3)予想外・想定外編 1
あの強姦未遂事件からひと月後、もうそろそろ風が冷たくなってきた頃のことね。
あの事件があってからますます一緒に行動する事が多くなったあたし達。あたし自身卒論で大忙しだから、婦人会の会合はお断りし続けているの。もちろんわかってくれてるけどね・・・。
当分「子供は?」「まだ?」攻撃から開放されて、卒論に集中できるわけ。春季にだいぶん単位をとってしまったから、あとはゼミと数講座。図書館で文献を借りてきて、まとめている状態。
官房長官公設秘書の旦那様は臨時国会が12月はじめまで開催されているから、残業も多い。たまに国会が伸びて、伸びて、その日の閉会が午前様になったことも数回あり。その時はさすがに議員会館の事務所に泊まり込んで仕事してたりね・・・。
まあそんな時はたんまりお手当てをもらってきてくれるんで助かるわ。
何もないお休みの日はラブラブモード全開!もちろん新婚だから、一日中いちゃいちゃしてるのよ。その時ばかりは卒論のことは忘れる。旦那様も携帯の電源切って仕事の話はシャットアウト。ホントにゆっくり出来ちゃう。
いつものように「今から帰る」コール。その電話にあわせて夕飯支度の仕上げをする。夕方はやはり道が混むから、いつもの倍以上かかる。今日は早いなあ・・・。そうか明日は国会がないのか。だから早いんだね。そして休み?最近休日出勤も増えてるからどうかな?
「ただいま。」
「おかえり。」
雅和さんは何か包みを持っている。ニコニコしながら・・・。
「なにこれ?」
「今日官邸で、防衛庁長官に頂いたんだ。おいしいケーキらしいよ。綾乃にどうぞって。」
「ケーキ?珍しいね。」
「今日はすごくニコニコされていてね。」
雅和さんはあたしにケーキの入った袋を渡してスーツを脱ぐ。あたしはこっそり中のケーキを見る。無茶苦茶おいしそう。それもいっぱい。
「横浜のおいしいお店らしいよ。食後に食べようよ。ケーキ大好物だろ?」
「うん!」
防衛庁長官の一人娘の美月さんはあたしの義姉さん。陸上自衛隊幹部であるお兄ちゃんの奥さん。性格が結構天然で、乙女チックな箱入り娘のお嬢さん。ままごとのような新婚生活だって聞いたけど?
「あのさ、今日すごく防衛庁長官が機嫌がよかったのはね、何だと思う?」
「なに?」
「美月さんがね、妊娠したらしいよ。春に生まれるんだって。えらく自慢されちゃったよ。」
「それでもしかしてうちはまだか?って言われたの?」
「よくわかったね・・・。父さんも困ってたよ。ボソッと早く孫が欲しいって言ってたけど。」
やっぱりそっちにきたか・・・。なんだかんだ言ってままごと生活のお兄ちゃんたちもすることしてるんだ・・・。ふうんいいな・・・。