うれしはずかし恋愛生活 東京編 (6)与党最大派閥新年会での婚約発表 | 超自己満足的自己表現

うれしはずかし恋愛生活 東京編 (6)与党最大派閥新年会での婚約発表

 1月のある日の夜、あたしはパパと共に雅和さんのお父さんが所属する派閥の新年会のためにホテルに行くことになっている。黒のフォーマルを着て雅和さんのお父さんが用意してくれたお迎えの車をマンションの地下に入れ、そっと乗り込んで会場に向かう。パパは、今日は黒のダブルスーツ。(いくらなんでも制服ではいけないでしょ・・・)


 雅和さんによると今日は後援会の人たちなども列席するらしい・・・。そこであたしを雅和さんの婚約者として、雅和さんのお父さんが挨拶の時に紹介するというの。あたしはわかっているから、きちんと髪の毛を清楚にきちっとまとめて、うっすら化粧をする。


ニューオータニの正面玄関に降りた私はびしっとスーツを着込んだ雅和さんに迎えられて、車を降りた。雅和さんは驚いた様子であたしを見つめる。


「なに?」

「いや、すごくきれいだと思って・・・。高2に見えないよ・・・。」

「老けて見えるってこと?」

「大学生かな・・・。僕と同じ年くらいに見える。ちょっといいかな・・・。」


雅和さんはあたしをロビーの隅に連れて行って小さな箱を取り出したの。そしてふたを開けて見せてくれた。中にはダイヤモンドの指輪が入っていた。


「え?」

「これはね、母さんの形見なんだ。まだ父さんが学生時代にバイトして貯めて買ったもの・・・。決して高いものじゃないらしいけれど、学生結婚した両親の思い出の品らしい・・・。母さんの遺言で、父さんのあとを継ぐどちらかにいい人が出来たらプレゼントしなさいって・・・。今日はじめて父さんに聞いて渡されたんだ・・・。だからこれは綾乃のものだよ・・・。」


そういうと雅和さんはあたしの左薬指にその指輪をはめてくれた。びっくりするくらいぴったりだった。 雅和さんのご両親は高校時代に知り合ってお母様が高校を卒業したと同時に結婚したらしいのよ。お父さんはまだ大学生で、周りに色々反対されて駆け落ち同然だったって・・・。何年後かにお兄さんが生まれて許してもらえたそうだけど・・・。その記念の指輪らしいのよ。だからなのかな・・・お父さんはあたし達のこと何も言わずに賛成してくれたのは・・・。境遇が同じだから?


「結納の時にまた買ってあげるよ。僕は今そのために貯めているから・・・。」
「いいよ、これで・・・素敵じゃない・・・。」


あたし達は新年会が行われる会場に向かう。


「綾乃、あさってだね、誕生日・・・。今年は何がいいかな?」

「この指輪でいいよ。」

「え?じゃ、食事にでも行こうかな・・・。たぶん今日マスコミにも正式に発表されるだろうから・・・。結納はまだだけど・・・。」


パパは受付の前で橘さんと話していた。橘さんはあたし達に気が付くと、胸に名札をつけてくれた。


「やっとですね・・・。」


pa-ty
この一言は直感的にどういうことかわかった。会場に入るとすごい人。テレビで見る議員さんや経済界の人。そして!後援会会長の土御門桜のお父さん。側にいるじゃない!桜が!!!もちろん政治関係のマスコミも結構な数・・・。あたしは恐縮してしまって、会場の隅においてある椅子に腰掛けていたの。雅和さんも横であたしに付き合ってくれた。パパは防衛庁長官となにやら話しているの・・・。


時間が来てある議員さんが挨拶をすると、新年会が始まった。そして次は総裁である雅和さんのお父さんが壇上に立って、長々話し出す。


『ちょっとここで私的なことで申し訳ありませんが、皆さんにご報告がございまして・・・。』


橘さんがあたし達を前のほうに誘導して、雅和さんのお父さんの横に立たせたの。


『ここにいる私の次男、雅和によい縁がありまして、こちらにいる源綾乃さんと婚約をさせることになりました。まだお相手の綾乃さんは高校2年生ですので、結納は卒業を待ってからとなります。来年は息子も成人式を迎え、時期的にも丁度いい。まあまだまだ若い二人ですが、皆様に色々ご指導賜りますよう、よろしくお願いします。』


そういうとお父さんは会場の人たちに頭を下げ、あたし達も同じように下げたの。一時シーンと静まり返ったんだけど、橘さんが大きな拍手をして、つられる様に会場中拍手喝采となった。もちろん土御門桜はびっくりしてそのまま会場を出て行ったけれど・・・。あたしは緊張のあまり気分が悪くなっちゃって、ある程度作り笑いであいさつ回りをしたあと、早々に帰ったの。雅和さんは一緒に帰りたそうな顔をしたけど、あたしが止めたの。だって色々あいさつ回りがあるでしょ・・・。雅和さんのお父さんは『明日学校があるから先に帰りました』といってくれたみたい・・・。


次の日、朝早めに起きて学校の準備をするの。するとパパが新聞片手に入ってきたのよね。朝から騒がしいことで・・・。


「綾乃と弐條君のこと載ってるぞ!」


見てみると政治面の下のほうにちっちゃく載っている。



『弐條首相の後継者候補、次男婚約発表

 昨日都内ホテルで行われた党派閥新年会において、

 弐條首相(50)の次男(慶應義塾大学法学部政治学科1年(19))と

 陸上自衛隊幕僚監部陸上幕僚副長、源将直氏(53)の長女(都内

 私立女子高校2年(17))との婚約を発表。結納は来春予定。・・・』



「これまたひと騒動ありそうだね・・・綾乃。」

「そうね、パパの職業出ちゃったしね・・・。」

「でもこれで堂々と弐條君と会えるわけだ・・・。まあいい、私の出世はここまでだと思うよ。」


パパは溜め息をつきながら、身支度をするの。あたしはいつものようにパパにお弁当を渡して、送り出す。あたしは戸締りをして、家を出たの。自転車に乗って、学校へ向かう。南麻布は静かだけど、パパの勤務先市ヶ谷と永田町は大騒ぎ。そうとは知らずに、あたしはいつものように自転車通学。いつもの時間に到着して、自転車置き場に自転車を置いて、教室に入る。


「綾乃おはよ~~!これって綾乃のことでしょ?」


編入以来、親友の美香ちゃんが声をかけてくる。手には新聞のコピー。何事かと、クラスのみんなが集まってきたの。


「すごい!綾乃の彼氏ってこういう人だったんだ・・・。あの待ち受け写真の人でしょ?」


あたしはうなずいて、答える。


「綾乃がどうしたの?」

「え?何々?」

「綾乃婚約したんだって!!!相手はね・・・・総理大臣の次男だって!!!すごいと思わない?」

「すごい!じゃあ綾乃は未来のファーストレディーになるのか・・・。超玉の輿じゃん!」

「綾乃だってお嬢様だよ。やっぱりすごいよね・・・。」


みんな言いたいように言う。


「弐條さんは普通の人だよ。ただお父さんが首相ってだけで・・・。まじめだし・・・。」


するとあたしの担任が放課後、校長室に行くように言う。お咎めでもあるのかな・・・。授業が終わったあとその足で校長室へ向かう。校長室に入ると、いろんな先生が待っていたの。


「失礼します。」

「源さん、座りなさい。」


あたしは校長室の椅子に座ると、校長先生があたしに話し出したの。


「今朝の新聞の政治面、見ましたよ。」

「はい・・・。」

「婚約については別に学業に支障がないようでしたら、構わないのですが、マスコミが問題です。他の生徒の学業に支障をきたすようでしたら、残念なことなのですが、退学をお願いすることになる可能性があります。今のところ、問題はありませんが・・・・。最近源さんは目に見えて成績が上がってきているので、こちらとしてもなんとかしてあげたい・・・。」

「ご迷惑をおかけいたしまして、申し訳ありません・・・。でも私はこの高校が好きなんです・・・。だからできるだけ辞めたくないのです・・・・。」

「わかっていますよ。こういうケースは他の系列高校や大学でもありましたから、なんとか退学はないかもしれません。ですからあなたは学業を優先にがんばってください。」

「はい。がんばります。」


まあなんとかお咎めはなかったけれど、先生の間では大騒ぎだったみたい。まあ慶応義塾高校のほうでは有名人の子供とか、アイドルが通っている事があるから、なんとかなるかもしれないけれど、この女子高校ははじめてらしい。結構自由な校風だから、最悪な場合以外退学はないって他の先生は言っていたのよね・・・。あたしは成績が落ちないように勉強しないといけないわけ・・・。


学校を出て、友達と別れて自宅近くのスーパーに寄って買い物を済ます。やはりワイドショーで結構話題になっているみたい・・・。あたしは夕方のワイドショーを見る。午前中に市ヶ谷駐屯地の一室を借りて、記者会見・・・。パパはまじめな顔をして、答えている。



「源さん、お嬢様がご婚約ということで、色々アジア外交上問題がでているようですが・・・。一言お願いします!」

「わたくしは自衛官でありますので、政治に口を出す身分ではございません。ただ、日本国の平和を守り、国民の皆様方をお守りする事が私の使命であると思っております。また国内はもとより、海外では人道的な支援活動、国際平和業務の任務を遂行するのみ。ですので、首相ご子息とわが娘との婚約によって現状が変わることはございませんので、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。」



そういうとあたしのパパは席を立って一礼をすると、会場を退出するの。ホントにパパらしい言葉だわ・・・。また雅和さんのお父さんも朝の定例会見で色々聞かれている・・・。



「この婚約は決して憲法第9条を守らず、この先日本が戦前のような軍国主義的になる事があるとか、自衛隊が軍隊として活動するためのものではございません。ただ二人の気持ちを考えた上、決めたことであります。先方のお父様が自衛官であろうとも、今の現状はまったく変わりませんので、ご安心ください。もちろん私の任期中に結婚させるつもりはございません。・・・」


本当にあたし達の婚約ひとつでこんなに混乱するとは思わなかったんだけど・・・。慶応日吉キャンパスで、色々学生のインタビューとか見てると、溜め息が出てきた。まあ色々あって早めの発表になったそうだけど・・・。やっぱりあのマニア騒動で、雅和さんの名前が出る前に、早めに発表しちゃったんだろうな・・・。


また清原さんからFAX・・・。 



源陸上幕僚副長のご令嬢について語り合う

   1. 彼女婚約しちゃったね・・・。

   2. >1 ホントもったいない・・・。すごく可愛いのに・・・。

   3. 昨日、紀尾井町のニューオータニで彼女見たよ!

      すっごくおしゃれしてて、やっぱ清楚で可愛い感じ?

   4. >3 写真撮ったか?で、どうよ?

   5. >4 写メだけど取ったぞ!

         俺のブログに来てくれ!

         しかし彼氏つき!

   6. >5 なんじゃそりゃ!総理の息子ってどうよ?

   7. >6 お似合いって感じかな・・・。

         モデル系のイケメン・・・。

         彼女は面食いだな・・・。

         頭よくて背が高くイケメン・・・

         敗北宣言・・・・。

         玉砕されたよ。

         そういや指輪渡してたぞ!

   8. おおおおおお!!!!で、彼女は家から一人できた?

   9.>8 いや、黒塗りの車でお父上と登場!

        お父上は制服じゃなかった!!!!

   10.そりゃそうだろ・・・。

      きっと結納の時は礼装制服着用にかける!

      日時がわかり次第連絡されたし!

      お父上の礼装姿が見て~~~~~。

      あ、彼女はやはり着物?

   11.>10 御意!

      みんな来春都内有名ホテルをチェックせよ!

   12.今日のお父上の会見見た?

   13.いや・・・どうよ?

   14.>13 見事な言葉だったよ。

      家柄よりも二人の気持ちを取るといった総理の

      言葉もすごかったけどな・・・。

      若者受け抜群だね・・・。

      あんな親がほしい!理想だ!

   15.暇なやつはマスコミから彼女を守れ!

   16.>15 よっしゃ!俺は慶大だから守ってやるよ。

      よく考えたら、彼氏は俺の後輩だ・・・。

      学部は違うけどな・・・。入試や入学式の時は話題になったな・・・。

      総理の息子は入学者総代で挨拶したらしい・・・。

      頭いいね・・・超秀才!



相変わらず・・・。怖い表現はなくなったかな・・・。明日は日曜日であたしの誕生日・・・。どうなるんだろう・・・。