うれしはずかし恋愛生活 (5)清原の恋愛?~清原三等陸佐の恋~ | 超自己満足的自己表現

うれしはずかし恋愛生活 (5)清原の恋愛?~清原三等陸佐の恋~


自衛官
 俺は陸上自衛隊に勤めている。防衛大学校、陸上自衛隊幹部候補学校、そして幹部学校を、俺が言うのもなんだが、いずれも首席で卒業という出世街道まっしぐらな人物なのだ。


この俺と親子ほど離れた上官で、陸上自衛隊中部方面隊ナンバー3である源陸将補の補佐役としてのお役目をちょうだいしている。本来であれば、中隊長という身分なのだけれども、源陸将補に頭脳を認められて部隊を持たず、側に置いて頂いているのである。幹部学校を卒業後すぐになぜか海外に防衛駐在員に派遣されて、今日に至るまでずっと源陸将補と共に自衛官生活を過ごしてきた。


 この源陸将補という方は、相当頭のきれるお人で、昨年まで階級に合わない防衛駐在員をされていたのだが、その前は結構な経歴の持ち主で、幹部自衛官の中でも異色中の異色といわれている。陸上自衛隊の中でも賛否両論のある方だが、きっと陸上幕僚長いやそれ以上まで登りつめられるお方だと信じている。厳しい反面、家に帰ると1男2女を持つお父上、俺よりひとつ年下の源一等陸尉のことはいいとして、二人のお嬢様に関して相当マメで、家族思いの方なのだ。


  その15歳高校1年生のお嬢様が超可愛い。今で言う「萌」。ちゃらちゃらした今時の女子高生ではなく、名門学園の制服がよくお似合いになる清楚で笑顔が明るくて純粋なお嬢様。きっと陸将補殿の教育がよかったのだろうね・・・。もちろん海外赴任先で、よく家にお邪魔してたからお互い顔は知っているし、お母上がいらっしゃらないから、赴任先では炊事洗濯掃除をお父上と共にやっていた。だから15歳で結構家事は完璧で、まあ言う理想的な女の子かな・・・。


  話は戻るけれど、防大に入るやつは二つに分かれる。源陸将補や源一等陸尉のようにお国のために!って考えて入る者と、軍事、戦略、武器、制服などの趣味、いわゆる「オタク」といわれるものたち・・・。大体この二つに分かれる。この俺は・・・まあ言えば後者のほうかな・・・。俺の場合は軍事戦略と制服・・・。防大に入る前から、一通りの軍事戦略ゲームはやってきたし、色々好きでネットオクとかで制服グッズを集めたんだよね。でもやっぱり実際本物を着て働いてみたいとか思って自衛隊入隊に希望したいと思ったんだけど、やっぱり戦略とかに興味あるから、防大に入って、幹部候補、そして幹部学校に入るのが一番理想だったので、一生懸命勉強してここまで来た。やっぱりゲームで鍛えたこの頭脳。役に立つかなあって思ったら別・・・。やっぱり全然違うって痛感させられたけれど、源陸将補に拾われて、司令部関係の部署に配属されて理想的な環境で働かせてもらっている。趣味で給料をもらえるほどうれしいことはない・・・。


 やっぱり防大に入るまで家に籠もってオタクやっていたから、全然出会いや女性経験ないし、興味もなかった。そんな俺が女性に目覚めたのは海外に赴任して、源陸将補のお嬢様と出会った時だ。すごく可愛いし、こんな俺にも優しくしてくれて、長い黒髪を可愛く結んで、そして微笑む姿なんか、本当に萌だよ・・・。10歳も歳が離れているのが悔しい・・・。手を出したら犯罪だよな・・・・。あとお父上の源陸将補が怖い・・・。そしてあのシスコンの兄源一等陸尉がうるさい。先日も用事で第3師団のある伊丹の千僧駐屯地に行ってあのシスコン一等陸尉に偶然会ったんだよね・・・。俺はあのシスコンの一年先輩に当たるし、結構防大でも仲のいいほうだったし、あのシスコン一等陸尉が配属されて、同じ独身同士で同じ官舎住まいであったから、よく近所の居酒屋とかで飲んでいた。


「源君、今日も一杯飲みに行こうか。今日は定時に帰る?」

「はい!いきましょう。どこに行きます?」

「そうだな・・・。総監部西門前の焼肉屋に行こうか・・・。一度着替えに戻ってから集合しよう・・・。7時頃なんかどうだろう。ちょっと話もあるし・・・。」

「はい!7時ですね!今日は日曜ですから、店のほうに予約入れておきます。」

「頼んだよ。」

「はい、では失礼します。」


本当に有能な後輩だ・・・。話というのはやはりあいつの妹のこと。次の非番の日が彼女の誕生日だから、ご飯を食べながら色々聞き出そうと思ったのだ。


さっさと仕事を定時までに切り上げて、愛用の自転車に乗り、官舎に戻る。 この官舎は家族で住んでいる事が多い官舎で、一人もんの俺やあいつは寂しいもんだよ・・・。よく西門近くのスーパーで色々買いこんで自炊しているけれど、やっぱり一人もんは一人もん同士集まってよく持ち寄りの飲み会をしたりするんだよね・・・。この時は階級を気にせず同年代で鬱憤を晴らしているから結構楽しい。最近結婚するものたちも増えて、続々と一人もん同盟が減ってきているのも事実。飲み会回数も減って、結局あいつとどっかに食べに行くんだよな・・・。


約束の焼肉屋まで自転車で5分かからない。最近自転車も飲酒で引っかかると聞いたから、歩いていくことにした。焼肉屋に到着するともうあいつは席についていた。


「先輩!こっちですよ!」

「おう!」


早速俺たちは生中を頼んでグイっと飲むと、焼肉盛りAを頼む。肉を焼きながら、色々話す。


「清原先輩、なんですか聞きたいことって?」

「ん?あのさ、今度の木曜日、お前の妹の誕生日だろ。」

「はい。綾乃ですよね。」

「何かプレゼントをしようと思ったんだけど、何がいいかなって思って・・・。何か好きなものとかあるのかな?」


あいつは疑いの眼差しで俺を見ていた。やはりあいつは噂どおりのシスコンだ。


「何で先輩が綾乃にプレゼントを・・・?」

「そりゃそうだろう。お父上の陸将補殿にはお世話になりっぱなしだし、それぐらいは当然だろ。」

「そうですかあ?怪しいな・・・。親父に聞いたほうが早いと思いますよ。俺は最近綾乃と久しぶりに会ったばかりだし・・・。」

「そんなこと聞いたら殺されるぞ!この前、家にお父上を迎えに行ったときにちょっとお前の妹と話していただけで睨まれたよ。」


あいつは苦笑しながら彼女のことを話し出した。なんとなくデータは集める事が出来た。


「なあ源、妹さんの好きなタイプってどんなんだろう・・・。」

「まあ、先輩みたいのはタイプじゃないと思いますよ。そうだな、背が高くて、優しくて、尊敬できて、なおかつ顔がいい。綾乃は結構面食いだから・・・。まあ先輩じゃないのは確かです。」


確かに俺の身長は170ちょっとだし、顔は普通・・・。でも誠意はあるぞ!地位も同年代の輩よりは金もある。何のために安い官舎に住んでいるのか・・・。これでも結構俺は貯蓄家だ。最近はパソコンの買い替えも控えて、欲しいゲームも買わず、ボーナスも手をつけず、実家にも帰っていない。もうすぐで高級乗用車くらいは買えるくらいになった。


「で、付き合っている人とかいないのかな・・・。まああのお父上ならいないか・・・。」


あいつはなぜか苦笑して俺を見ていた。


(後から聞いてびっくりしたけどね・・・。)


「妹に手を出したら怒りますよ。親父もきっと・・・。」


食事を終えて、俺たちは官舎まで、なんだかんだ言いながら歩いた。適度にアルコールが入って、本当に気持ちがいい。年明けから半月、今年こそ彼女に告白しようと初詣の日、決意した俺・・・。十歳の年の差なんてなんだ!俺は彼女が好きなんだ!あいつが隣にいるからそんなこといえなかったけど、彼女の誕生日、その日は決戦だ。行動に移す!


家に帰ると早速パソコンを立ち上げて、データ収集・・・。こういうのは得意な俺・・・。悲しい性・・・。オタクってこんなもんさ・・・。そうだ服も買わなきゃ。彼女の前ではいつも制服か防衛駐在員の時のスーツのみ。私服姿など見せた事がない。小洒落た服でも買いに行かないと・・・。近所のスーパーに行くときのようなカッコではだめだしな・・・。やっぱ予算からしてユニクロ?コムサ?いやせっかくだから、いいもの買おう!非番の日、まず神戸に行く前に梅田に行って何か揃えよう。ついでにプレゼントも・・・。


決戦当日、俺は朝一に梅田に出て、今日着る服を上から下まで揃え、プレゼント探し。やっぱりオタクの性か・・・。ヨドバシカメラに行ってしまう。今時の高校生って何が欲しいんだろう。でもなかなかなくって、しょうがないから一度帰って着替えてから三宮に行くことにした。商店街をぶらぶら歩いてもなかなかなくって、結局元町に・・・。そういえば、あいつが言ってたことを思い出したんだ。彼女は今ビーズ細工で出来た可愛い小物を集めてるって・・・。ふと百貨店でいい物を見つけた。スワロフスキービーズって言うものでできた可愛いクマの置物・・・。結構高い・・・。手のひらサイズなのに・・・。まあこれに決めて、きちんとプレゼント包装・・・。もちろん花も買った・・・。時間を見るとやばい下校時間・・・。 昨日この日のために散髪をして、朝から気合を入れて髪の毛を整えた。服も何度も何度も鏡とにらめっこしておかしくないかチェックした。普通の俺が、なんとなくかっこよく見える・・・。


校門前のガードレールに腰掛けて、彼女が出てくるのを待った。いろいろな生徒がじろじろ俺を見ながら通り過ぎていく。どっか変なのかな・・・。今までこんなことをした事がない俺は恥ずかしくてしょうがない。すると遠くに見える彼女の姿。やっぱり可愛い。他の女生徒がくすんで見える。でも隣にいるでかいイケメンは誰だ?俺より10センチ近くでかい・・・。そしてモデルのような顔つきと、体形・・・。すると彼女は私服の俺に気が付いてくれた。


「あ、清原さん!」

「誰?」


すると側にいる男が不機嫌そうな顔で俺を見る。


「この人はね、パパの部下の清原三等陸佐。制服と違うから、誰かと思ったんだ。どうしたの?今日非番なんだあ・・・。」

「え、ちょっとお願いがありまして・・・。時間いいですか?」


彼女はうなずいてくれてほっとした。


「じゃ、綾乃、先帰るね・・・。」

「うん、弐條さん。今晩ちゃんと6時までに来てね。」

「んん・・・。」


なんなんだこの男は・・・。彼女を呼び捨てに・・・。俺をじろじろ見るなよな・・・。やっぱりいいとこのお坊ちゃんなんだろな・・・・。お迎えの車で帰るんだから・・・。


俺は彼女の手を引いて、校門から離れて、プレゼントと花を渡す。


「あ、これ・・・今日誕生日とだと思って・・・・。」

「え、覚えてくれてたんですか?うれしい!!!」


満面の笑みの彼女を見て、ホントに心底惚れてしまった俺・・・。萌を通り越す!いい感じだ!


「で、清原さん。お願いってなんですか?」

「え?あ、ああ・・・。実はもうすぐ母さんの誕生日で、何をあげたら言いか、迷って・・・。一緒に選んでもらえると嬉しいかなって・・・。」


もちろん口から出任せだよ。くにの母の誕生日は最近終わったとこ。一緒にいたい口実・・・。


「いいよ。ちょっと家に電話するね・・・。清原さんも、今晩のあたしの誕生会来る?もちろんパパもお兄ちゃんもいるけど。」

「え?いいの?」

「うん。じゃあ電話しとくね。」


彼女は携帯を取り出して家に電話をしている。これで数時間は一緒にいられる。嬉しい!彼女とデートだ!後はきちんと気持ちを伝えるだけ・・・。元町で色々物色して、彼女が選んだものを購入・・・。はあ・・・母の日にでも贈るかな・・・。お礼にお茶でもしようと三宮そごう内の店に入る。


「ねえ、清原さん、プレゼント開けていい??」

「どうぞ。」


彼女は包みをそっと開けて中身を取り出すと、すごく気に入ったのか、満面の笑みで俺を見つめる。


「これ欲しかったんだ!何でほしい物がわかったの?」

「実はお兄さんに聞いたんだ。ビーズ細工の小物を集めているって聞いたから。」

「そうなんだ・・・ありがとう、大事にするね!」


俺はエスプレッソを飲みながら、嬉しそうに眺めている彼女を見つめる。何でだろ、今日に限って苦いエスプレッソが甘く感じるのは・・・・?恋ってこんなものなのかな・・・。いつ気持ちを伝えようかと悩みながら、彼女を家まで送る。長い坂の途中、アイスクリーム屋があるのを見つけ、入ってアイスもご馳走した。店内2Fの椅子に腰掛けながらここで告白しようと俺は決心した!


「あのさ、俺・・・。」

「何?」

「俺さ、君の事が好きなんだ・・・。」

「え?またまた冗談を・・・。10歳も歳が離れているのよ・・・。」


俺はなんか照れてしまってこう言ってしまった・・・。


「ごめん、ごめん、冗談だよ。ちょっといってみたかったんだよね・・・。こういうとこ入るのは初めてだし・・・。ごめん気にしないで・・・。ただの冗談だから・・・。」

「だと思った。だって清原さんがあたしを好きなことありえないよね・・・。清原さんはホントにお兄ちゃんみたいな人だもん。」


やっぱり彼女は俺のことそういう風に見てたんだな・・・。彼女が20歳くらいになったら俺の気持ちわかってくれるかな・・・。その時俺は30か・・・。それまで待つしかないかな・・・。複雑だ・・・。これ以上気まずいのは嫌だし、まあいっか・・・。


店を出るとすっかりまわりは暗くなって、彼女の家に急ぐ。家のガレージには源陸将補殿の車が止まっているということはもう帰宅されているんだね・・・。上官である源殿に俺の気持ちを知られたらまずいな・・・。


「さ、入って・・・もうみんな揃っていると思うから・・・。パパ~!清原さん来たよ!」


源陸将補殿が出てきて俺を見る。一緒にいた事情を知っているのか、嫌な顔ひとつせず俺を招き入れてくれた。彼女は俺からプレゼントをもらったことを告げると、源陸将補殿は俺にお礼を言って来た。


「いえ!いつも陸将補殿にお世話になっておりますので、当たり前です!」


ダイニングに招かれた俺は校門で見かけたあのイケメンと目が合う。何でここにいるんだろうと思いつつ、椅子に座り、彼女が着替えから降りてくるのを待つ間、あのイケメンに視線が俺に突き刺さっているように思える。


「清原君、彼とは初対面だね。紹介しよう。彼は弐條雅和君、綾乃の婚約者だ。」


(えええええええ!!!!!)


「彼の父は内閣総理大臣なのですよ。まだ二人の間柄は公にされていないから、清原君、内密に頼むよ。まあ言えばこれは国家機密情報だよ。それは言いすぎかな・・・。」


そういえば去年の外遊の際に総理の側にいた。そういえばこの男、総理に似ているよな・・・。それにしても彼女はもう婚約しているなんて・・・・。まだ高校生だぜ!庶民の俺には理解できないよな・・・。 俺はショックで何はなしたか、何食べたかさえ覚えていない・・・。覚えているのは確か彼女とあの総理の息子が、すごく楽しそうに話している姿かな・・・。 俺の遅い初恋は木っ端微塵に砕け散った・・・。またオタクな生活が始まる・・・。いつになったら俺にも春が来るんだろうか・・・・。いっそのこと陸将補殿に縁談でも頼もうかな・・・・。ああ、初めて知った失恋・・・。やっぱり相当辛いんだね・・・。明日無断欠勤しそうな雰囲気だよな・・・・。まあ結局普段どおりに出勤したけどさ・・・・。


追伸:誕生日プレゼントの中に、総理直筆の手紙が入ったプレゼントがあったのにはびっくりした・・・!やっぱ本当だよな・・・・。



【作者からの一言】

綾乃のパパの部下 清原三等陸佐の恋の話を書いてみました。25歳で三等陸佐になれるかはわかりません。ま、フィクションですから・・・。清原さんはこの先出てくる人です。ああ、自衛隊の詳しい人に突っ込まれそうやわ・・・。


そうそう、陸上自衛官のイラストを書いてみました^^;ちょっとソフトの使い方がわからず、小さいです^^;