むかしむかし 第1章 二人の若宮 | 超自己満足的自己表現

むかしむかし 第1章 二人の若宮

 いつの帝の御世のことであったか、摂関家の或る大納言家に双子の姫君が生まれた。二人の姫は、瓜二つどころか、色白で品がよく家柄もこの上ない姫君たちであったので、成人後、父が右大臣となると、姉君は東宮妃として、妹君は分家筋の摂関家右近衛大将の北の方として嫁いだ。

 双子という人生のいたずらか、同じ頃に懐妊し、お二人とも同じ頃にご実家である一条邸に里帰りした。お二人は仲良くご実家で過ごされていたが、妹君が産み月に入り、産気づかれたと同時にまだ半月御予定が早いのにもかかわらず、姉君も産気づかれ、同じ日にご出産された。残念ながら妹君は難産の為、若君を死産した。一方姉君は、なんと双子の皇子を産んだ。なんと言うことか。

 しかし、双子の皇子のうち、弟宮は生まれて直ぐに泣きもせず、乳母の乳を含んでも直ぐに吐き出してしまう始末。姉君付の古参の女房たちも、「残念ながらこの皇子は長くは生きられません」とみな揃って姉君に申し上げた。しかも、ひ弱な上に双子の皇子ということからか、この弟宮は生まれていなかったことにせよと、右大臣の命令が下った。

 それであればということで、死産をして嘆き悲しんでいた妹君はこの弟皇子を自分の子としていただけないかと、右大臣と姉君に申し上げた。

「このようなひ弱な弟皇子・・・あなたはそれでもいいのでしょうか・・・。しかしながらあなたならきっと安心してお預けできるわ。」
「お姉さま、この皇子を私の亡くした若君として大事にお育ていたしますわ。ご安心なさって。」
「あなた方がそのようにされようとするのなら、この父も協力しますぞ・・・。このことは右大臣家内での秘密にしないと・・・。皆の者もこのことは内密に・・・よいな。」


この日の夜、或る者は内裏へ、或る者は右近衛大将家へ、皇子、若君誕生を知らせに走った。
双子同士
 時が経ち、兄宮である一の宮と、右近衛大将の長男として育てられた弟宮はこの一条邸でいとことして仲良く一緒に育った。

 活発で利発な一の宮常仁親王に対し病気がちであるが何事もなくお育ちになった右近衛大将の若君常康君は、両方の母君が双子であったのだからそっくりであっても不思議ではないと、自分たちが兄弟であるなど疑わず仲良く過ごした。もちろん周りの者たちも本当の関係に気が付くはずがない・・・・。






《作者の一言》

これがこれから起こることの序章です。現代でこそ、双子の妊娠出産は安全となってきましたが、この時代では無事に生まれてくることさえなかったはずです。特に二代続けてなど・・・。一応この四人(大納言の姫君たちと若君、若宮たち)は一卵生双生児のつもりで書いていますのでもっと危険がともないます。うちの双子は二卵生なので比較的安全でした。高校時代に双子をモチーフに書いていた私ってすごいかも^^;双子が自分に授かるなど思ってもいなかったし・・・。一卵生であっても育つ環境や育てる人によってはたぶん性格は変わると思いますよ^^;多分・・・。汗第二章からは一気に時代が飛びますよ^^;もちろん主人公は右大将の若君常康君ですけれど・・・。どうして双子をそのまま親王として育てなかったかに関しては後ほど真相が明らかにはてなマーク