前回までのあらすじ
中2の春、横浜から神戸に引っ越して来た実里(みり)は「漫才部」たるものを創部。
マンションの隣人で新入生の隼世(はやせ) 、
クラスメイトの瀬戸、
さらに瀬戸の幼馴染の壮樹が部員に加わった。
夏休みに入り、「M-1でナイスアマチュア賞」を
目標に、実里と隼世のコンビ「みもさと」は
練習を重ね、ついにその日がやって来た。
やけに車線が多い道路を窓から見下ろす。
SPACE14。
心斎橋PARCO内にある劇場で、
M-1グランプリ1回戦大阪会場は行われる。
「14階ってあんま近所ないやんな?
さすが都会」
大都会に興奮気味の瀬戸さん。
でもいつもより口数が多いような気がする。
「絢、お前緊張してんねやろ」
「バレた?」
壮樹くんの察知力はそれを見逃さなかった。
「うちは客席からしか見れへんから、
もうここの階着いてから
心臓バクバクやねん」
「遅くても心斎橋駅からバクバクせえや」
心臓に両手を当てて気弱になる瀬戸さんは
壮樹くんにいつも通り容赦なくツッコまれた。
「さすが幼馴染」
人がごった返す中でその様子を
近距離で見ている隼世くんは、
平然と汗を拭きながら感心していた。