前回までのあらすじ

 中2の春、横浜から神戸に引っ越して来た実里(みり)は「漫才部」たるものの創部を決意。

 マンションの隣人で新入生の隼世(はやせ) 、クラスメイトの瀬戸が部員に加わり、

創部のための職員会議の後、漫才部は正式に文化部の仲間入りを果たした。


 ある日の放課後、いつものように3人でネタを相談し合っていると、見知らぬ男の子がやって来て…?



「いやほんまに帰ってもうたやん! どういうことやねん!」

 

 言葉とは裏腹に、表情からは満足感が窺える。


「邪魔すんでー」と言って入って来たと思えば

「邪魔すんなら帰ってー」と隼世くんが言い放ち、

素直にそれに従ってどこかへ行った。


 そして、何が起きた!?と私が混乱している間に

再びこの教室に戻って来た。


 ……え、どういうこと??


 笑いが落ち着いた瀬戸さんは、私が今の状況を

理解できていないのを察したようで、こう説明してくれた。


「実里、今のは吉本新喜劇の有名な掛け合いやねん。

チンピラ役が舞台のうどん屋さんとかに押し入る時に、こうやって登場すんねん」


 ほー……と、納得の息を漏らす私。


「いや説明はええて! 俺のこと忘れてないよな!?」


 広がりがあり、舞台向きだなとすぐわかる

張った声で、戸惑いながら彼は言う。


「忘れてたわぁ、壮樹」


 そうき。瀬戸さんはその男の子をそう呼んだ。