前回までのあらすじ
中2の春、横浜から神戸に引っ越して来た実里(みり)は「漫才部」たるものの創部を決意。
マンションの隣人で新入生の隼世(はやせ) 、クラスメイトの瀬戸が部員に加わった。
3人は創部のための職員会議で「M-1でナイスアマチュア賞」という目標を発表。会議の最後に、隼世と実里のコンビ「みもさと」が漫才を披露している。
割と多めのセリフ量でずっと続いていた隼世くんのターンが終わり、私の出番。
「逆に言えば、横浜が開港したおかげで神戸と横浜のライバル関係みたいなのができてる訳だよね?」
ほんの少し語気を強めて隼世くんを問い詰める。
続けて、隼世くんはごまかすようにそっぽを向いてこう言った。
「いや知らんて」
さらに私は言う。
「東京と大阪に接してる県の港町ってだけで、普通こんな張り合えないもんね」
「せやけど、知らんて」
「なんでか両方とも意味わかんないプライドで
『出身どこですか?』
『横浜ですー』『神戸ですー』って県名言わないもんね」
見下すかのような口調で私は言い放った。
「横浜も同じなんや」
妙に納得した様子で隼世くんが言った。
「ちょっとは攻めて来いよ!」
わっ、と、職員室に笑いが起きた。
私がお腹から出した、1段階大きな声のツッコミは、
見てくれている先生方や生徒会メンバーの本心を突くものだったみたい。
「ずっと守りだし、なんで最後納得しちゃってんの!」
そのままの声量で隼世くんに詰め寄る。
私と隼世くんの耳に、再び笑い声が届いた。