前回までのあらすじ

 中2の春、横浜から神戸に引っ越して来た実里(みり)は「漫才部」たるものの創部を決意。

 マンションの隣人で新入生の隼世(はやせ) 、クラスメイトの瀬戸が部員に加わった。


 3人は創部のための職員会議で「M-1でナイスアマチュア賞」という目標を発表。会議の最後に、隼世と実里のコンビ「みもさと」が漫才を披露している。




でも、もし平安時代に横浜港も開いてたら、今頃どんな感じになってたんだろうね」


 私は隼世くんに、新しい話題を提示する。


 さっきあまりウケなかったことを心配しているのか、視界の端で座る瀬戸さんが口パクで「大丈夫!」と言ってくれているのが見えた。


「先輩、何言うてんですか」

 どことなく反発する様子で隼世くんが言い返してくる。


「まだ文句あるの?!」

 それに不満気な反応を示すと、隼世くんの姿勢がぴんと整う。


「平安の関東は田舎すぎん!?」


 その言葉を強調するように、隼世くんは1単語1単語をはっきりと、十分なボリュームで若干嘲り笑いながら言った。


「やかましいわ!」

 それに対し、隼世くんのセリフの最後の1文字に被せるように、さらに声を張ってツッコむ。 


 横に立つ隼世くんに向けていた顔を、呆れた時のように外側へ、さっと向ける。



 思わず吹き出している先生や生徒会メンバーの表情がちらりと見えた。