DVはする側もされる側も自覚がなく、深刻化してしまうことが多いです。
かつてはDVは治らないものだと考えられ、『DVからの家族再生 加害者が変わる5つの条件』の著者であるNPO法人女性・人権支援センター ステップの理事長栗原加代美女史もDV被害者には離婚を勧めることしかできませんでした。
しかし、実際に離婚できるのは約1割の女性だけで、離婚できたとしても相手がストーカーなどになったりして完全な解決にはならない。栗原理事長はそんな思いから被害者支援のシェルター開設と併せて加害者更生プログラムを始める決断をしました。
彼女はアメリカの刑務所や精神病院で成果を上げている「選択理論」を使ってプログラムを構成することにしました。アメリカの刑務所では選択理論の受講のおかげで再犯率が2.6%まで下がり(受講しないと再犯率は56%)、精神病院では202人中200人が退院できるようになりました。
彼女自身も選択理論を取り入れた加害者更生プログラムで受講者の約8割を更生させ、当事者や家族から感謝をされ、社会貢献者として2021年に表彰をされています。
この本を読んで感じたのは加害者には加害意識がない人がほとんどで、被害者から「あなたがしていることはDVだ」と何度も言われ、やっと気づいた人が多いということです。
加害者更生プログラムというとお説教やお叱りを受けることを想像する人が多いのですが、そんなことはなく話をよく聞いてくれ、グループワークも楽しいという意見が多いのが意外でした。
だからこそ効果を上げることができているのかもしれません。
「選択理論」は怒りや悲しみは自分自身が選んだもので、それに沿った行動を選んだのは自分自身だという考え方をするものです。
受講者の一人は自分の生い立ちを憐れまれ、可哀想と周囲から同情されるのではなく、あくまでも加害行為を選んでいるのは自分自身なのだと考えることで、ではその行為をどのように変えていこう、と建設的に思案するのが良いと言っていたのが印象的でした。
選択理論について興味が出たので今度勉強してみようと思います。