自助グループを主催しています、と話すと、大抵の人に「自助グループって何?」と聞かれます。
私自身は自助グループについてとても良いものだと感じていますが、知名度が低いがゆえにとても心理的な負担が多いものなのではないかと誤解されることもあります。
そんなイメージを払拭し、等身大の自助グループの姿がよく表れている小説があるので、今回はネタバレ全開で、『死にたいって誰かに話したかった』の感想を書いていこうと思います。
主人公の奈月は37歳で病院で医療事務をしていますが、空気が読めないせいで仕事もうまくいかず恋人も友達もいません。彼女は「生きづらさを克服する会(生きづら会)」を始め、仲間たちと一緒に自分と向き合っていきます。
奈月と雄太は性別は違えど、能力が低く空気が読めない、いわゆる底辺の人間としての生きづらさがありました。
反対に、薫と茜は客観的には成功者として映る人たちで、些細なことをきっかけにして人生がほころび始め、生きづら会に参加することになります。
最初は手探りで言いたいことをいうだけの会でしたが、メンバーが増えるにつれて、意見を否定しない、などルールを作り、月に何度か集まって、色々なことを話すようになっていきます。
色々な考え方を知るにつれて、メンバーの心境に変化が現れます。
できない自分を受け入れること、男らしくない自分へのコンプレックス、マウント合戦がやめられないこと、実父からの性被害。
現実は大きく変わらないけれど、過去や現実を受け入れ、弱い自分をさらけ出すことで、開き直ることができたり、折り合いがつけられたりして、生きやすくなっていく様がとてもリアルでした。
自助グループの雰囲気もよく表現されていて、色んな人に読んで欲しい作品です。