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夢で、うなされた。

ここ最近、父のことを

思い出す日が

増えていたからかもしれない。

 

 




 

あの日のことが

また夢に出てきた。

心臓マッサージを受けている

お父さんが急に目を開けて、

私を見て話しかけてきた。

「せいか、一人ぼっちにして

…ごめんな」って。

そう言った瞬間、

病室に「ピィーーー」

という音が響いた。

私は夢の中で声を

上げて泣いていて、

たぶん実際にも

泣いてたんだと思う。

 

 

 



 

となりで寝ていた彼が気づいて、
「せいか」って

優しく私の名前を呼んで、

ぎゅっと抱きしめてくれた。

そのぬくもりで目が覚めると、

目尻に涙の感触が残っていた。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?」と

彼が心配そうに顔を覗きこんで

「お父さんの夢、見てた…。

一人ぼっちにして

ごめんって言ってた」

そう打ち明けると、

彼は私の頬に手を添えて、
優しくこう言ってくれた。

「もう一人じゃないよ。

せいかには、俺がいるよ。

だから大丈夫、ずっと抱きしめてて

あげるから、安心して」

そう言って、

おでこにキスをしてくれた。

 

 

 

 

 

私は黙って彼の胸に

もぐりこんで、目を閉じた。

彼の鼓動がトクントクンと

静かに響いてきて、

それがとても心地よかった。

 

 

 

 

 

「私は大丈夫」って自分に

言い聞かせてたけど、
心の奥底にはやっぱり消えない

さみしさが残ってる。

泣きたくなる夜だってある。

 

 

 

 

 

でもこうして、

隣で彼が抱きしめて

くれるだけで、
私は少しずつちゃんと

息ができるようになる。

本当に、悲しい夢だった。
胸がぎゅっと苦しくなった。

…早くお墓参りに行きたい。
父と母に

「私は今、しあわせだよ」

って伝えたい。