七夕の日。テスト期間中で
いつもより早く帰れた私は、
制服のまま近所の
スーパーへ立ち寄った。
手まり寿司作ったら
かわいいかもと思って
お刺身をいくつか選んで
買い物かごに入れた。
なんとなく七夕っぽい
ご飯を作りたかった。
炊きたてのごはんに
すし酢を混ぜて、冷まして。
小さく丸めて、
お刺身をちょこんとのせて。
ちょっと手間だけど、
彼が「かわいい」って
言ってくれそうな気がして、
それだけでうれしくて。
夜、彼が帰ってきて
「おっ、なにこれ!
かわいすぎない?」
「手まり寿司。
七夕っぽいでしょ?」
「めちゃくちゃオシャレだね。
せいか、すごいなぁ」って
めちゃくちゃ褒めてくれた。
やっぱり彼はやさしい。
手まり寿司をぱくっと
口に入れた彼が、
目をまんまるにして
「おいしい!最高!」
って言ってくれて、
それだけで今日一日が
報われた気がした。
食後、「せいか、
おみやげあるんだけど」
と言って冷蔵庫から
取り出してきたのは、
私の大好きなプリン。
「えっ、うれしい~!」って
にっこにこでスプーンを
口に運ぶ私を見て、
彼はそっと頭をなでながら
「かわいすぎ」って笑ってた。
そして私の頭を撫でながら
彼はこう言った。
「俺、短冊にねこう書いたんだ。
彼女がずっと俺の側で笑って
過ごせますようにって。
これからもずっとその
せいかの笑顔みていたいよ。
というか、
笑顔でいられるように
俺がせいかをずっと守るからね」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥がぎゅうってなって、
すぐ言葉が出てこなかった。
「ありがとう、なおやさんに
守られてばっかりだね」
「それでいいんだよ。
俺はせいかを守るって
決めてるんだから」
そう言って彼は
私の肩に腕をまわした。
「なおやさん、
私ね短冊に書いたの。
お父さん、お母さん、
私は今とても幸せです。
いつまでも見守っててね、って」
彼は黙ってうなずいたあと、
そっと私の手を握ってくれた。
「きっと見てくれてるよ。
せいかが頑張ってることも、
俺のこと、大事に
してくれてることも。全部。
そうだ、お墓参り行かなきゃね」
「うん、そうだね
もう2年経つんだね。
寂しさもあるけど
なおやさんがいてくれるから
私は大丈夫。
それに、私たちも
もうすぐ2年だもんね」
「うん、そうだね。
せいかと過ごした2年、
俺にとって全部特別だよ。
来年も再来年もずっと
一緒にいよう」
そう言って彼は私にキスした。
「…プリンの味がする」って
くすっと笑う彼に、
私は思わず「もー」って
口をとがらせたけど、
彼はいたずらっぽく笑って、
「おいしい」って
もう一度キスをしてくれた。
その優しいキスに、
嬉しくて、
ちょっとだけ泣きそうになった
まだまだ、
私たちの毎日は続いていく。
小さな笑いや、
くだらない会話のなかに、
しあわせが詰まってる。
このしあわせが
続きますように🎋