保護者面談の翌日から
なんだか学校で、
ちょっとざわざわした
空気が流れはじめた。
「昨日来てたのって、
せいかちゃんの
お父さんじゃないよね?」
「え、めっちゃイケメンだった!
まさか、彼氏?」
「えーいいなー!羨ましい〜!」
最初はなんとなく
笑ってごまかしてた。
でも誰かがその話を
また別の誰かにして、
気がついたら、
普段話さないような子まで
私のところに
来るようになって、
「彼氏って何歳なの?」
「どこで知り合ったの?」
「ほんとに一緒に住んでるの?
すごくない!?」
「ねぇ、お家行ってみたい〜!」
…って、次から次へと質問攻め。
なんだかみんなに彼のことを
勝手に盛り上がられるのが、
ちょっとイヤだった。
みんなが
「かっこいいんでしょ?
会ってみたい!」って
言ってくれるのはうれしい。
でも同時に、
私だけが知ってる彼を、
なんとなく見せたくない
気持ちもある。
私だけが知ってる声がある。
「今日のお弁当、
すっごく美味しかったよ」って
照れながら褒めてくれる顔も、
夕飯を出したときに、
「うまっ…これ、ほんと好き」って
幸せそうに
食べてくれるあの表情も
全部私のなおやさんなのに。
その夜、玄関の音がして
彼が帰ってきたとき、
私は思わず何も言わずに
ぎゅっと抱きついた。
「…どうしたの?」と
ちょっと驚いた彼の声に、
私は小さな声でつぶやいた。
「なんかね、ちょっとだけ、
やきもち妬いちゃった」
彼は何も言わずに、
私の頭をそっと撫でてくれて
小さく笑ったのがわかった。
みんながなんて言おうと、
私にとって彼は誰より特別な人。
彼の隣にいられるこの場所は、
誰にも譲りたくない。
だって私は、
ちゃんと彼に
選ばれた彼女だから。
